
以前、編曲家についての本を読んだときに、
7、80年代の歌謡曲には大雑把に3人のキーマンがいるんだと知ったんですが、
その、3人それぞれにも本が出ていて、だんだん、これも読みたいな、とムクムク。
この本は、そのなかでも最重要の人物、萩田光雄氏の功績をまとめたもの。
といっても、半分ぐらいはご本人が生い立ち含め回想的に書かれていて、
残りが、様々な人のインタビューと対談、分析的なコラム、作品リストになっています。
ちなみに、リスト(18年まで)は膨大で全体の3分の1ぐらいあります。
例によって、70年代の音楽業界の忙しさ、過酷さがよく判るわけですが、
それ以上に、萩田氏の圧倒的な才能が光ってます。
まあ、ご本人の弁なんで、いとも簡単に語られるんですが、
ヤマハの学校に通う前に、独学でほとんどの理論は判っていたとか、
ほぼすべての編曲が、ギターソロまで書き譜だったとか、サラッと凄いこと言うんですよね。
それに、ヒットさせることがかなり自覚的に出来たようで、
これまたサラッと編曲家を信用しない生意気なミュージシャンなどをディスってます。(誰とは言ってませんが)
まっ、ヒットの量からいっても、これほど自ら自信を語っていい人はいないわけですが。(笑)
理論的な部分はそこまで解説されてるわけじゃないんですが、ちょこちょこ、なるほどと思う部分も。
例えば、「木綿のハンカチーフ」は、詞が物語になっていて凄く長い上に割愛できない。
なので、なるべくテンポ以上に軽快に感じさせたくて、イントロラストのギターをポリリズミックにしたとか。
(3泊フレーズになってるんで、実際の感覚よりだいぶ早く感じるそうです)
ほかでは、やはり、筒美京平さんあたりは、イントロやアレンジも指定してくることが多いとか。
意外にも、一般的にヘタと言われてるアイドルなんかを偏愛してたり。
ほかにも、いろいろ語りたいことはあったんですが、
あまりにもリストが膨大過ぎて、読んだ内容すぐに思い出せません。(笑)
ちなみに、リストみると、意外な人が作曲してたりして驚きます。
ああ、あの人、自作自演だったんだって。
興味のある人はぜひ。
ちなみに、関わりは少ないのに、何故か、何回も大瀧(詠一)さんがエピソードに出てくるのが可笑しい。
- 2020/06/03(水) 07:33:17|
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自分が好きなミュージシャンも読んだということで、
面白そうなんで買ってみました。
原題が『プリンス・イン・ザ・スタジオ』ということで、
スタジオ内でのレコーディング部分中心の内容ですね。
帯にもありますが、“ゴシップなし” “憶測なし”で、
すべてその場に居た人の証言と本人の過去のインタビューで構成されてます。
自叙伝のようなものではないですが、アマチュア時代も含むので、
生まれたところからデビューするまで、どう音楽に触れて来たかもフォローされてます。
まあ、噂というか、ネットのニュース記事やなにかで、24時間いつでもレコーディングスタンバイ状態、
エンジニアは凄まじいプレッシャーで、プリンスが現れたとたん思わず録音ボタン押しちゃう。(笑)
みたいな話は聞いてたんですが、これがその場に居た人の実際の話となると、凄いですわ。臨場感。
だって、噂以上なんですもん。
とにかく寝ない人で、夜通しレコーディングして朝帰って、午前中に再開、みたいなのが一生続いたらしい。
そら、短命ですわ。寝ないで働き続ける人は60の壁超えられないのが相場だからね。
そのへんの異常なレコーディングし続け人生に関しては、ぜひ読んで確認していただきたい。
技術的にも超人的なテクニックで、楽器弾きながらリアルタイムで編集してたり、
新曲のドラムだけをまず、おかずも含めて一発で完璧に録音終わらせたり(もちろん譜面はない)、
およそ人間技ではない曲芸みたいなやり方で時短レコーディングしてたりするわけです。
このへんもぜひ読んで圧倒されていただきたい。
どうも、本人の感情とは別に無限に音楽がドボドボ降りてきてしまう状態だったようで、
それを完成(デモじゃないところが凄い)させないうちは寝れないし次のことに移れなかったんだとか。
もう比較対象がモーツァルトぐらいしか浮かばないですよね。
なもんだから、厳重に管理してある倉庫にいつリリースしてもいい完パケ状態の曲が、数百、
だと思ってたんですけど、桁が違ってました、数千曲あるらしいですよ。
監理する側がすべてリリースするまでに一代じゃ終わりそうにないな。
とにかく、楽器や機材の種類のことは詳しく書いてあるので、
どの曲で何の機材を使ってた、とかいう情報には事欠きません。
80年代中盤あたりから日本のメーカーも登場してくるのがちょっと嬉しい。
ただ、噂や、ネットの記事とはちょっと違う感じの部分もあって、
『ダーティー・マインド』がデモのままリリースされたとか、
「kiss」がホントは他人に提供した曲を回収改変されたものとか、
そういうのは出てなかったですね。
まあ、インタビューされた人が事情を知らなかったら、それは載らないわけなんですが。
また、そういった意味も含めて、基本、いい部分しか出てません。
取り立ててゴマ擦ってるわけじゃないですが、批判的な内容はほぼないです。
あと、『イマンシペイション』の音が前から気になってたんですが、
詳しい解説が94年までで終わってて出てませんでした。(笑)
(途中で、本の厚さから全部載せられるわけないな、とは思いました)
ということで、好きな人にはお勧めですが、
これからプリンスを知りたいという人は・・・、
違う本からの方がいいかな。伝記とか。
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- 2020/01/24(金) 09:28:15|
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タツミムックの『アニソン大全』をアマゾンで買ったときにチラッと見て気になって、
レビュー読んだら、面白いという人と同じくらい難しすぎて判らんと怒ってる人が。(笑)
どうやら、コード進行をメインに理論解析をしてるみたいで、
いっぱい載ってるからと懐かしいだけで買った人は、専門書じゃないか!!
と、まったく理解できなかった模様。
まあ、紹介文よく読めば、ある程度理論解説の本になってるって判るんですが、
まさか、ここまでって感じだったんでしょう。(笑)
なんせ、冒頭に用語解説があるんですが、コードネームの読み方とかそんなんじゃなくて、
インターバルから始まって、サークル・オブ・フィフスを含むキー、スケールに、コード理論等々。
数ページですが、これを解説するだけで本が出てるような内容がみっちり。
(アマゾンのレビューに恨み節が色々書かれてるんで、読むと怒り具合が判ります)
で、これは読まねば、と買ってみたんですが、
もちろん、曲聴いただけで調性が判るわけじゃないんで、解説を瞬時に理解するってわけにはいきませんが、
理論も含めて(完全な理解じゃなかったとしても)面白かったですよ。
レビューの中には熱さが足りない的なことも書かれてましたがそんなことないです。
著者はベーシストなんで、ベース関係は特に力が入ってるのが判るし、
とにかく、この400曲近い分析はその量だけでどれだけ大変だったか判ろうってもんです。
(参考文献も2ページにわたって載ってます)
それと、この本の面白い所は、アニメ特撮の曲を使ってコード分析をしているところだけじゃなく、
実は、テレビ音楽(劇伴、主題歌)における裏方の素性をあらわにしようとしているところで、
その情報量(注釈)の多さは、以前読んだ『ニッポンの編曲家』の足りない分野を補完するほど。
特に、スタジオミュージシャンの情報はかなり詳しいです。
それに伴うトリビア(知らないからトリビアに感じるだけかもしれませんが)も数多。
*詳細な内容を知りたい方は、
ディスクユニオン(出版元です)のHPが詳しいです。
ここからは、あまりの量に付箋を付けつつ読んだんで、その部分をピックアップ。
まずは、渡辺宙明氏の項目で『キカイダー』はチェイスだ、という指摘の次の『01』の注釈の子門真人。
知らなかったけど、子門真人って作曲家でもあったんですね。
1曲、2曲じゃなくてけっこう書いてますが、有名なところでは、『Dr.スランプ』のED。意外、ビックリ。
次は、有名ですが、『アクマイザー3』の項のベーシスト、寺川正興氏のエレベーター奏法。
知らないという人は是非聴いてください。全編もんの凄い音数のベースですから。ノリノリです。
次は、『スパイダーマン』。
実はサントラ、『エキセントリック サウンド オブ スパイダーマン』が、
パーカッショニスト必聴の重要パーカッションアルバムなんだとか。これも知らなかった。
次は、菊地俊輔氏の項目の『ドラえもん』で、初代OPが実は変則的な作りという話。
詞先だとメロや構成がいびつになりがちだけど、言われてみるとかなり変わってる。
ちなみに、小曾根真バージョンは確かに凄かった。
次は、渡辺岳夫氏の項目で『キャンディ・キャンディ』。
作曲、編曲、演奏、コーラス、歌と、べた褒め。日本のポピュラーミュージックとしてもトップクラスだと。
しかも、それを、「100万枚売るよ!!」と宣言して、決め打ちでほんとに実現させるナベタケ先生。さすが。
次は、冨田勲の項目の『みんなのせかい』。
冨田勲でも最初期のモーグ使用楽曲。とにかくいい曲。ネットで聴けるんで是非。
次は、『マッハゴー・ゴー・ゴー』の注釈の吉田竜夫。何と作曲までしていたとは。
(『マッハ』ではなく、歌入り絵本等、動揺テイストの物)
次は、三沢郷氏。
『デビルマン』に『ジャングル黒べえ』、『エースをねらえ』に『ミクロイドS』に『流星人間ゾーン』。
独特なクセのある感じがかなり好きかも。
次は、『妖怪人間ベム』。なんと、この曲、エレキベースとウッドベースが共存してる!!
次は、『サザエさん』。筒美京平だけに、音だけ聴くとかなり黒い。(らしい/笑)
OPラスト、「今日もいい天気~」のあと、急に音が外れたようになる長年の謎は、
どうやら、推測では、2種類のテイクの違うテープ編集によるもので、
昔は、機材に誤差が出ることがあったため、ピッチが下がってこもり気味になったんだろうとのこと。
次は、『おんぶおばけ』。これは、かなりブラックかつアバンギャルド。
なにゆえに『おんぶおばけ』をこんなに黒くしたかね。
次は、『レインボーマン』の「死ね死ね団のテーマ」。
これは、解説の通りファンクなんですが、指摘されてなかったんでフォロー。
この曲、ちゃんとスタジオでレコーディングされてるはずなのに、
バックと歌がどんどんズレていくという世にもまれな曲。
バックがノリノリでどんどんテンポが上がっちゃう。これも是非聴いて欲しい。
最後は、『キテレツ大百科』。最初、OPが細野晴臣だと見て仰天!!
そしたら、レギュラー放送のときじゃなくて、その前のSP版のOPだった。
ちなみに、その時の声優が地味に違っていて、トンガリはなんと『ウルトラマンレオ』の真夏竜!!
ほか、『Gu-Guガンモ』の主題歌を歌っていたのが松原みきだったとか、
『ドラゴンボール』のED、『エスパー魔美』の主題歌、
『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』の主題歌を歌ってるのが同じ人とか、まだまだあります。
とりあえず、ユニオンのHPで内容確認して、読めそうだったら買いです。
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- 2019/10/25(金) 11:13:37|
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『テクノ歌謡ディスクガイド』の方を前に買いそびれて、
だいぶ経ったけど読んでみようかと、最近になって調べたら、
「こっちの方がインタビュー充実してるし熱量多し」等のレビューが多く、
じゃあ、こっちかな、と購入。
いやぁ、いいですね。
愛すべき本です。
サブカルチックにハスに見つつも大好きなのが滲み出てます。
それにしても、ほとんど知ってんだろうな、とか思いつつ、アイドル等序盤を読んでましたが、
後半に行くにしたがって、知らない人たち続出。(笑)
まあ、インディーズの中でもマイナーな人たちとか、活動歴が極端に短いとか、
年齢的にも知らなくて当然かと思うような人たちもいましたが、
マジカル・パワー・マコって、誰やねん!!
一緒に組んでた人たち見たら、テレビ出演で苦情が来るのも判るけど(笑)、
怖い、もう、知らない日本が広がってる。
作り手側でいうと、細野の乱作ぶりが目立って、こんなに選ばずやってるかって感じ。
しかも、インタビューで「内容は全部保証します」というように、名曲率が高い。
他だと、ムーンライダーズ系、近田春夫、見岳章、サエキけんぞうなんかが暗躍してたんですね。(暗躍ではないか)
あとは、船山氏等、編曲家の人たちもこぞってやってる。
編曲家といえば、『夏色のナンシー』は、元四人囃子の茂木由多加氏の編曲であの感じになってたんですね。
今は、ネットで確認しながら読めるんでホントいい時代です。
これ1冊あればだいぶ楽しめちゃいますよ。
ちなみにですが、本はCDサイズです。
初版は、誤字脱字等、ミスが大量らしいんで(買ったのは09年の2刷)、買うならそれ以外をお勧め。
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- 2019/06/09(日) 06:24:33|
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アマゾンの関連商品紹介から。
あと、『ザ・カセットテープミュージック』に著者が出てたこともきっかけ。
読んで字のごとく、80年代のイントロについて思い出を語った本ですね。
チョイスは、アイドルからバンドまで硬軟取り合わせた40曲で、
好きだから選んで、褒めるために書いてるから、読んで悪い気はしない。
けど、ほとんど内容に触れてなくて浪人時代の恨みつらみの思い出に終始することも多々。
評論というなら、もうちょい理論的に深くてもいいと思うがどうなのか。
(もちろん、そういうアプローチもちゃんとありますが、余談は多い)
それと、基本的に、洋楽からのパクリは容認の著者だけど、
後の方に言い訳的に、これらの曲はパクリにあたらん、見当違いだ、と上げている曲から『浪漫飛行』が洩れている。
メロは違うがイントロを含むアレンジがモロで有名なんだが、独創的なベースラインって・・・・・・。
で、大仰な言い切りで、80年代屈指だの、代表するだの、だんだん納得しかねる感じにもなってきて、
まあ、結局、好きなの勝手に褒めてるだけだからな、と思ってたら、最後の方の総括部分でね・・・・・・。
なんかね、自己矛盾しまくりな文章なんですよね。いろいろと。
可愛さを追求することとYMOの出現で、邦楽が洋楽の新譜を追い掛けなくなるのが80年代で、
サンプリングという名の引用で洋楽からのパクリが容認されるのが80年代って、それ、追い掛けてるんじゃ。
それと、こういっちゃなんだが、地方出身者独特の猛烈な東京コンプレックスも感じて、
なぜか、フジテレビと秋元康と石橋貴明を盛大にディスってる。(まあ、秋元康は仕方ない気はするが)
ニューウェーブが嫌いなのか、それを“半笑い感覚”と称して、それが真正面からの論評をしづらくしていると。
で、その“半笑い感覚”の権化が上の3人(一つ会社だが)で、特に石橋が主犯ということらしく、
80年代の音楽を真面目に語ると、さも、石橋に「そんなことダセーよ!」と言われているよう感じるのだとか。
なんか、昨今の異常なフジテレビ叩きと同じメンタリティーを感じるのだが。
たしかに、80年代は努力や汗を否定して、カッコいいこと楽しいことのみを追求したし、
真面目さをあざ笑うようなところもあった。
ただし、それを中心的に啓蒙してたのは、局ではフジテレビなのは当たっているけど、
タレント的にはタモリであってとんねるずが代表というのはシックリこない気がする。(イジメコントのことなのか?)
特に石橋は貧乏の出でそれゆえイジメっ子ではあるけど、70年代的なスポコンとか大好きで、
シニカルさはむしろ感じないんだがどうなのか。(ラジオとか聞いてると相当熱い人なんだけどね)
あとね、なんか、遅咲きでいろいろ拗らせた人独特のヤバさというか、
コレクター気質の人に多い、いつもは普通だけど、好きなこと(か嫌いなこと)になると突如人格が破綻する感じ?
のようなものを感じる。(この手の人たちは自己矛盾があっても平気)
思えば、テレビで見たときからそれらの片鱗を感じてたし、それゆえ本も買うの躊躇してたんだっけ。
なんで、手ぇ出したんだろな。
テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌
- 2019/04/21(日) 06:22:30|
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