
亡くなった小三治師匠特集の『ユリイカ』です。
これ、実は、初めは買う気が起きなかったんですよね。
見た瞬間は、おっ、買おう! と思ったんですが、
すぐに、これには、良くないことも書かれてるだろうと察して、
そういうのあえて読まなくていいかと。
で、だいぶ経ってからレビューを覗いたら、
やっぱり、いいことばかり書かれているわけじゃないと書かれていたんですが・・・、
さらに続けて、でも読んでよかったとも書かれていて、じゃあ、自分もあえて読むかと購入。
で、読んだ結果は、師匠、自分が想像してたより全然偉大だなと。
誰も到達できない世界に一人で分け入っていたんだなと。
小三治の落語だけが特別な感じがしてたのには訳があったんだと。
もちろん、いろいろ読んで、演技が巧いだとか了見になるだとか知ってはいたんですが、
その先、その奥がこんなに深かったとは・・・。
いや、読んでよかったですよ。
後半3分の1ぐらい、様々な専門家の似たようなテーマでの分析が5つぐらい続くんですが、
はじめ、どうにかせーよ、と思ってたんですが、最後まで読んだらこの並びに意味がありましたね。
どんどん深くなる。(笑)
広瀬氏以外もこんなに大人数、分析したくなるほど面白がってる人が居るんだと、なんか我が事のように感動。
で、良くないこと、批評的というか批判的に描いてる人が2人ぐらいいて、
1人はまあ、半々な感じなんでいいですが、もう1人の放送作家がまあ酷い。
ここまでひねくれた物言いが出来る人はそうはいなかろう(しかも追悼特集で)という感じ。
とにかく、小三治のやることなすこと、一つとして認めてなくて、
書き出しが、「談志と志ん朝が若死にしたから祭り上げられただけのただの運のいい人」で、
最後が、「素人寄席から出てきた最後まで素人だった人」 だからね。
この人以外の人が褒めてる部分が全て気に入らないところらしくて、全部逆に捉えてる。
じゃあ、よくいる談志シンパなのかと思いきや、談志もケチョンケチョン。
それだけじゃなく、周りにいて褒めたり一緒に何かやったりした人すべてを実名で攻撃。
もう、評論家から小沢昭一まで全方位ですよ。
なんか、コレクター気質の歪んだ異常性のようなものすら感じましたね。
(ここでいうコレクター気質っていうのは、自分の好きなものに固執するあまり、
ライバルにあたる物や批判してくる人を攻撃してしまう人のことで、
この感じの人、ほんとに何かのコレクターの人に多いです。
まあ、そういう性格だからコレクターがやれるんですけどね)
とにかく、こんな性格の悪い文章を読んだのは初めてといった感じで、
思わず、小三治ファン辞めそうになりました。(笑)
ほかの人が褒めてくれてたんで辞めませんでしたけどね。
ということで、小三治落語の様々な分析が読みたい人は是非。
ユリイカも、批評精神もいいけど、亡くなった直後ぐらいあったかい思い出話とかに出来ないもんかね。
出来ねーか。
書き忘れたので追伸です。
ちなみに、文菊氏の吐露は赤裸々で感動的ですらあります。
ここ、必読。
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- 2022/12/23(金) 06:29:54|
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実は、映画の方は見てないんですが、
後からこういう本を入手しようとしても大変な場合があるので、
気が付いた時点で購入しました。
タイトルの通り、作中に出てくるビジュアルのデザインの変遷ですね。
非常にいいです。なんかやる気が出ます。
相変わらず、一発目は竹谷さん頼みなのが驚きですが、
それをことごとく元のデザインに直していく庵野が面白い。
だったら頼まなくても・・・、と思いそうですが、
リアリティーの解像度が高い人に最初に描いてもらうのは重要。
あと、相変わらず、山下いくとのデザインがキレキレ。
ちょっとしたスケッチにもセンスを感じるし、出してくるアイデアの量が凄い。
頼もしい限りなんですが、ちょっと全体にハイセンス過ぎかな。
前田真宏もやっぱり上手い。
もの凄く安定感のある絵でちょうどいい落としどころを心得てる感じ。
樋口真嗣も絵が上手かったのは意外でした。
自分が知らないだけかもだけど。
あと、庵野に感じたのは、いまの日本のやれる範囲の中で最高を目指すという、
あくまで、予算内、スケジュール内でどうするか、というのに重きを置いていて、
決して、わがままから無理な注文したりしないという所に非常に感心。
(だからといって、上手くいくとは限らないのが可哀想だが)
なおかつ、自分の目指すものを実現させるために、
現実的なアイデアをスタッフの総力で出していく。
いやぁ、ネットの悪口に負けずにコンスタントに撮らせてあげたいですね。
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- 2022/09/18(日) 03:08:07|
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唐突ですが、『甲賀忍法帖』読んでみました。
これは、以前、同じく山田風太郎の『幻燈辻馬車』を読んで面白い、と。
非常にですね、感じ入って、ほかのものも読みたいとなったんですが、
如何せん、大量に作品があるので躊躇。(残念ながら読むのが遅いんで)
で、全仕事系の本をまず読んで、
そこから、気になったものを5、6冊ですが、抜粋ということに。
ただ、忍法帖ものは外せないだろうということで、
とりあえず、1作目の『甲賀忍法帖』は買おうと。
で、結構後回しにしてたんですが、ようやく読んだ次第。
では、結論から言いますか。
これは、
激烈に面白い!!!いや、『幻燈辻馬車』でその面白さ、設定、構成の巧みさ、
縦横無尽なキャラの出入り、ミラクルでマジカルなとも言いたくなる纏めっぷりは堪能したんですが、
どこか、もっと、泥臭く、おどろおどろしいものなんじゃないかと身構えてたんです。
もちろん、そういう部分はありますが、意外なほど現代的な感覚を感じました。
内容ではなく、小説の描きっぷりにですが。
だから、読みやすく、グイグイ引き込まれて最後までノンストップのジェットコースター状態。
なのに、セリフや、文体は講談に準じたようなキメの利いたカッコ良さ。
章が終わる最後のセリフにもの凄い次への引きを感じると同時にいちいちしびれましたね。
本当は、各キャラクターの造形や能力の見所を抜粋して話したいところなんですが、
よく知られた話だし、知らない人にはそれがネタバレにもなるんで今回は割愛。
でも、『バシリスク』の画像で地虫十兵衛は知っていて、
これがどう活躍するんだと疑問で、移動出来んだろうと。
そしたら初出でズコー。(笑)
その後には、うわぁぁぁ!!
ほんとにノンストップアクションで、このままだと、ドラマ部分が足りないんじゃ、と危惧してましたが、
最後まで読んだら、凄い恋愛小説読んだみたいな感覚にもなりました。
やっぱり巧い。とにかく構成に無理がないしね。それでいて意外性もちゃんとあるという。
講談社文庫版には、浅田次郎の解説があって、それがいちいち納得なんでそれもぜひ。
いやぁ、ほかの忍法帖シリーズも読みたくなっちゃったんですよねぇ。
(調べたら、すげぇある・・・・・・)
どうするかな。
(まずは、買ったものから読みましょう)
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- 2022/09/16(金) 06:27:18|
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訳あって学生の時に買わなかった荒俣宏の文庫があって、
それを最近、不意に思い出し、
あれは、いったいどういう内容だったのかと確認したくなって、
アマゾンのレビューを読んでたら、よっぽど関連書籍のほうが面白そうで、
ポチポチ、ポチポチ、4冊ぐらい購入。(安かったのもあったけど)
そのなかの1冊がこれ。(笑)
ユリイカなんだけど、昔、美術書かなんかで贋作の本が面白かった記憶があったんで、
偽書も面白そうだなと・・・・・・、
しかし、届いたら久々に驚いた。なんかの間違いじゃないかと思うぐらいぶ厚かった。
これは、やっちゃったか?
で、読んだらですね、これが想像してたよりずいぶん内容が硬い!!
対談もあるけど、ほとんどが論文ですよ。
いつものことだけど、こっちは、少し真面目な『ムー』読むぐらいのつもりで買ってんのに。(笑)
だから、ヴォイニッチ手稿とか、謎の人物の伝記とか、そういうのの解説なのかなと思ってたら、ちょっと違ってた。
違ってたというか、そういうのもいっぱい出てくるんですが(もちろん真面目に扱ってます)、
自分が思っているのに比べたら、はるかに偽書の世界は広かった。
もうね、ちょっと扱ってるものの種類が多過ぎて思い出すのも大変なんですが。
まずは、和洋それぞれの歴史書、宗教関係、これらがまず多いです。
嘘をつくために書かれた偽文書が一般に思い当たるものだと思いますが、
誰かの発言を別の人がまとめたもの、歴史上あるはずだと仮定して書かれたものや、
予言書、宗教的な業で亡くなった先人と夢で対話したものなど、もちろん神話も。
客観的に見て事実じゃなさそうなもの、本人が書いてなさそうなものはすべてこれ、偽書なんですね。
写本しかないような本も厳密にはその一部に入ってしまうんだとか。
怖いのは、本として纏まっていないだけで、発言は正しいんだからと正義感や善意で、ない本を作ってしまうこと。
こういうことがあるのかと、正直驚きを隠せなかった。
ほかで面白かったのは、レムの一連の作品。
存在しない本の書評や序文を書いたりしている。
センスが面白い。
後半になってくると、現代のウェブなども絡んできて俄然面白く。
文字化けについてのものは、非常に興味深かった。
多自然主義というのがまだモヤモヤしているけど、
このアマゾンの先住民のものの見方を物語の中に取り入れられたら相当面白いものが書けそう。
もう、諸星大二郎あたりがやってそうだけど。
そのほか、トールキンやホームズなど、架空のものに実在感を求める現象。
あまつさえ、ジェダイの理念を本当の宗教として信仰している集団がいるとか。
それと、最後の2つが扱ってる、薔薇十字団、グッときましたね。
名前ぐらいしか聞いたことなかったですが、こんなだったんですね。
元祖オカルティズム。
実は、ほとんどのものが面白く、興味深く読めました。
(なかには、斜めに読んだのも2、3ありましたが)
ちょっと量と幅があり過ぎて、一つの本の内容として覚えてられないのが残念ですが、
偽書という言葉にピンと来た人にはお勧めですよ。
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- 2022/08/26(金) 06:38:13|
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経緯を説明しますと、
ブログでアニメや特撮のヒーローを勝手にリメイクしていまして、
次にやる題材が『8マン』だったんで、関連資料として再読しました。
(さらに詳しい経緯は、
8マンの感想からどうぞ)
で、『8マン』に『サイボーグ・ブルース』さらに、『悪徳学園(
これも感想あります)』
なんかを読むため、すぐに始められないということで、繋ぎのリメイク企画を提案。
ただ、早く読めれば、それはやらないか後回しというつもりだったんですが・・・・・・、
これが、無性にやりたくなってきてですね、
どんどん読み方を遅くするという事態に。(笑)
あまつさえ、違う小説を挟んで同時に読んでみたり。(笑)
でも、繋ぎ企画もどんどん進んでしまうんで、もう、いい加減サッサと読んでしまおうと。
で、『サイボーグ・ブルース』ですよ。
久々に読みましたが、相変わらず傑作、というか、どんどん時代と共に傑作度が増してくるという事態に。
いや、先見の明が凄いんですよ。
キャラクター設定やアクション描写、メカ描写、ちゃんとネットワークも出てくるし、
悪の設定の複雑さなんか目からうろこですよ。そして三つ巴になっていく展開。
第3の立場になってしまうアーネスト・ライト。
ホント続きが読みたいですし、映画にして欲しい。
で、あくまで資料として読んだんで、読みながら、『8マン』との関連は、と探したんですが、意外とないですね。
エピソードの再利用とかあるのかな? と思ったんですが、それもない感じ。
ただ、リメイクするにあたって、参考にするのは、断然こちらということになりそうです。
まあ、8マンを黒人にはしないつもりですが。
『ロボコップ』や『ブレードランナー』はおろか、
その原作の『電気羊』の日本語訳出版より1年早いという『サイボーグブルース』。
ぜひ読んでみてください。
テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学
- 2022/07/22(金) 07:30:08|
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