ウルトラマンが口開けて笑う話。
<主な登場人物>
■科学特捜隊メンバー
ハヤタ(黒部進):本作主人公。異星人と衝突、死んだのち異星人と一心同体となり復活。マジメで実質の副隊長。無闇に顔の濃い25歳。ふてぶてしいほど頼りがいあり。
ムラマツ(小林昭二):科学特捜隊日本支部ムラマツ班隊長で、通称「キャップ」。謹厳実直の慎重派だが、ときに冷徹な面もある36歳。
アラシ(石井伊吉):射撃の名手にして力持ち。常に危険の矢面に立たされるアンビバレントな26歳。不死身説あり。
イデ(二瓶正也):武器開発担当の化学ヲタ。ムードメーカーに徹するがメンタルは弱い24歳。照れ笑いが甲本雅裕似。
フジ・アキコ(桜井浩子):科特隊の紅一点。主に通信担当。宇宙人難の相がある若干ウーマンリブ思想かぶれの21歳。
岩本博士(科学センター所属)(平田昭彦):武器開発に従事するナイスミドル。
■一般人
ホシノ・イサム(津沢彰秀):科特隊に出入り自由の謎の子供。短パンの悪魔。いざとなれば殺しも辞さない11歳。気転を利かす頭はあり。
巨大な上弦の月が出た湖畔の洋館。
壁は薄黒い赤(実際の建物はログハウス風だが、ミニチュアは真っ赤)、屋根は暗い深緑のスレート。ノッカーには鬼かゴブリンかという胸像風レリーフ。室内には、カラス、鷲、ザリガニ、ワニ、アオダイショウ、ムササビ、イグアナ、イモリ、海ガメ、鹿など、生きているもの、剥製のもの入り乱れて飼われ(置かれて)ている。
そこに白髪、白衣のいかにもなマッドサイエンティストがおり餌などを与え、どうやらそこは何かの研究室らしいのだが、洋館の一室ではなく、岩を穿った洞窟の中らしい。壁面にはラスコーというよりは、子供の読み物の挿絵のようなカラーの動物壁画があり、よく見ると、それは恐竜を模している。
博士(風の男)は一通り動物に餌を与えると、「さてと、お次はジラースの奴だな」と、餌が入っていると思しき大き目の籠を抱えると、何故か内側が石壁にカムフラージュさせてある鉄扉を開け外へ出て行く。
湖にボートで漕ぎ出す謎の博士。「ジラース!!」「ジラース!!」と湖面に呼びかけると、波立つ湖。続いて獣の咆哮。
博士は、ジラースと名付けた姿の見えない獣をいたく気に入っており、また頭の良さも褒め称える。
ジラースの食べ残しで湖に魚が増え、それを釣りに来る客が増える。民宿でも経営してるのか、この循環がえらく嬉しいらしいのだが、間違っても昼には顔を出すな、と忠告すると暗転。
某日、洋館のある湖、北山湖では爆釣。浮かれた釣り人も釣れすぎておかしくなったか、「こうなったら、毒でもブン撒いて、いっぺんに全部獲っちまうか!!」と、何しに来たんだか判らないことを言う始末。
ちなみに、浮かれた釣り人の片割れは『ウルトラQ』の戸川一平役、西條康彦。
魚の異常繁殖の情報を得た科特隊は、さっそくビートルを飛ばして北山湖の調査へ。
このシーン、様々な角度からジェットを吹くビートルが映し出されるが、どの角度からも格好が良くあらためて感心。地味な感じの設計がまたいい。『妖星ゴラス』のプロップを塗り直して流用したらしいが、『ウルトラマン』のために造られたとしか思えないぐらい嵌っている。
ビートルが湖に近付くと、博士は岩窟の小窓から心配げに注視。
湖の上に達すると、ハヤタはビートルから特殊潜航艇を切り離す。ソナー、カメラによる目視によって湖中を調べるが異常はなし。が、潜航艇のライトが届かなかった岩陰には不気味な黒々とした尻尾が蠢いていた。
その後、何事もなかったため直帰しようとするハヤタたちにキャップから特別休暇のサプライズが。
急なご褒美に小躍りするハヤタとイデ。アラシだけは潜航艇なのでまだ湖の中。3人はさっそくそのまま下田温泉ホテルに直行する。
シャワーを浴びるイデ、報告書を作るハヤタ、庭のテーブルで爆食するアラシ、それぞれ休暇を楽しむ。
場面変わって、トンでもない装飾を施したサファリパークのレンタカーかと思うような、キバと耳の生えたクルマが林道を走行中。乗っている男女は“少年グラフ”の記者&カメラマン。モンスター博士と呼ばれる中村博士の屋敷に向かっている最中なのだという。
屋敷に着くと、そこは例のジラース博士の洋館。パフュームのあーちゃんがオバさん化したような猿人顔の女記者は、ネッシーの特集をするため、恐竜の話を聞きに来たと告げるが、ジラース博士の異様な目力に気おされ、声も途切れとぎれ。拒否してるような渋面で「どうぞ・・・」と許可すると入れることになるのだが、カメラマンの一眼ぽくないカメラだけは拒否。
博士は例の岩窟研究室に2人を通すと、壁画を示しながら恐竜解説。
「これがディプロドクス、頸の長さが20メートルもあります」「恐竜の王様といわれるケラトザウルス」「ステゴザウルス、こいつも凶暴です」「トリケラトプス、三本の角が武器です」「イクチオザウルス、陸に上がることが出来ないので、腹の中で卵を孵します」などと若干興奮気味だが、肝心の絵はどれもドイヒー。ケラトザウルスなどは谷岡ヤスジのマンガばりに歯をむき出しでカメラ目線。
ちなみに、調べたが、ケラトザウルスは角や背中の装甲板が怪獣っぽくて当時の映画界では引っ張りダコ。実際には大きくないのだが、ティラノサウルスなみにデカく凶暴に描かれることが多かったらしい。
その後、博士はネッシーを「ディプロドクス(竜脚類)でしょう」と、一般には首長竜(プレシオサウルス)などの大型水棲爬虫類とする説が有力ななか、独自の新解釈を披露。(竜脚類だとする説も少数派だがある)
さらに、あーちゃん記者が15年前にネス湖に行って行方不明になったという二階堂教授の話を振ると、「知っています・・・」と昔話を始める。
映像の上に白い網点(新聞の写真やマンガのスクリーントーンなどに見られる点々の集合体)を被せた珍しい回想シーンで、二階堂教授が探検調査の打ち切りを振り切り、1人でネス湖の奥深くに分け入って消息を絶った旨が語られる。博士は、恐竜に入れ込んでいた教授がネス湖でネッシーに食われて死んだのなら本望だろう、と不気味な付けたしも追加。
直後、カメラマンからライターを借りると、貧乏暮らしをこじらせたか、目の前で借りたライターを白衣の内ポケットへ。慌てたカメラマンが制止すると、実はそのライターがカメラになっていることに気付いていた博士は、黙ってケースを引っこ抜くとフィルムを引き出し投げて返す。「帰ってもらおう!!」なかなか侮れないジイさまらしい。
CM開け、下田温泉ホテルのタイアップカット。ロビーをウロウロするカメラマン。ゲームコーナーでピエロのピンボールにスロットカー(葉巻型のフォーミュラーカーがカッコいい)、そのほか古いエレメカがズラリ。ちなみに、カメラマンがバーにいるハヤタたちの場所を聞いたホテル従業員が古谷敏。(一瞬、アマギ隊員かと思ってギクリ)
カメラマンが探していたあーちゃん記者は、イデとつるんで湖に夜釣りに出ていた。
湖面を眺めているイデとあーちゃん。
しばらくすると遠くの湖面が波立ち獣の咆哮。凝然としていると今度は水上を横切るゴムボート。あーちゃんの記者魂が燃え上がり、追い掛けることにすると、別の場所でも追い掛ける影が(ジラース博士)。
イデはヘンゼルとグレーテルよろしく、木にブーツから外した流星ワッペンをペタリ。さらに追跡。
どんどん進んでいくと、イデとあーちゃんはおかしな扉の付いた洞窟に迷い込む。研究室風のその洞窟には地球儀やフラスコ。暗闇のなか壁画の恐竜をライトで辿って行くと、博士の研究室だと気付くあーちゃん。直後、闇の中から博士の顔がドーン。あーちゃん「きゃぁ~~!!!!」
拳銃を構えて「秘密を知ったからには帰すわけにはいかん」と、さっき客を通していた気がする部屋を見られて凄む博士。
ジリジリと対峙していると、「そろそろ帰って来い」とハヤタからの通信がいきなりイデの流星バッジに入る。
博士はバッジを毟ると踏みつけ、壁の恐竜画の目の部分を引っぺがすと、隠れていたスイッチをON。
すると、ケラトザウルスの谷岡出っ歯が開き、ジェットビートルが来たときに覗いていた小窓が開く。「ジラース!!」「ジラース!!」叫ぶ博士。
とうとう顔を出すジラース。ゴツゴツとした溶岩のような肌質のカエル似の頭が水面から現れる。肩があり人間的な腕もあるが、首にはしおれたエリザベスカラーのようなものが付いている。
博士曰く、15年掛けて育てたらしい。
上半身を晒すと、すぐに沈んでいくジラース。
翌日、イデとあーちゃんが行方不明決定となり、キャップとフジも捜索に参加。ハヤタとアラシも地上から捜索開始。
湖では、先日の浮かれた釣り人コンビが、(これが前に言っていた毒なのか)ドライアイス状の物体を素手で湖に大量投入。ボコボコと湖面が沸き立つと、待ちきれないとばかりに舌なめずり。人としてのランクが低い感じが滲み出てしまっていて見ていて嫌な感じ。程なくフナやコイが浮き上がり歓喜の握手。もちろん浮かれている人には見返りもすぐ来るもので、後ろを振り返ると絶叫するジラース。(毒が効いた?)泳いで逃げる浮かれ釣り人。
浅瀬に上がってきたジラース。思っていたより全然エリ巻きがどデカい。その緑掛かった体色は、洋物のゴジラのポスターを思い出す。
毒のためか半狂乱になっているジラース。昼間に出てきてしまって慌ててなだめに走る博士。血走った目が怖い。
スパイダーで先制攻撃のアラシ。「やめろ!!」と組み付いてくる博士。思わず自分で作り上げたと口走ってしまい、勢い自慢話になってしまう。
その目の色を見てハヤタ、「狂ってる!!」
キャップは異常な博士の考えに「二階堂教授のように学問として・・・」とたしなめようとするが、博士はおもむろに自分の皮膚と頭髪を剥ぐと自分が二階堂であることを露呈させる。フジ隊員悲鳴。
カツラの下は黒髪の短髪だった博士は、狂乱状態でジラースに駆け寄ると、そのまま踏み潰されてしまう。
一方、バッジの修理に成功したイデは、場所を伝えて救出してもらう。目印のワッペンが役に立つ。
研究室に迫るジラースを1人で食い止めているアラシのスパイダーがエネルギー切れ。見かねたハヤタはみなから外れて変身をする。カプセルを押すと、白く発光した光線がカプセルの先端から螺旋状にハヤタの身体を包み込み巨大化。
反抗的なジラースに身振りで何やら示すウルトラマン。口が大胆に開いていてちょっとアホっぽい。
やる気満々なジラースは、岩を拾うと空中に投げ、口から光線を吐き破壊し、どうだと言わんばかり。それを見たウルトラマンは大人気なく対抗して、自分の強いところ見せ付けるが、顔はコロッケの真似した岩崎宏美。
横綱相撲ばりに胸を貸し、掛かってきなさいと余裕なウルトラマン。散々翻弄するといきなりジラースのエリ巻きを毟り取る。
首がスッキリして慌てるジラース。血まみれのエリ巻きをマタドール気取りで振り回す、狂気のウルトラマン。
あんまり笑えない闘牛コントが続き、散々揉み合い、閃光を発するパンチをすれ違い様に食らわすとジラースが口から血を垂らして絶命でフィニッシュ。さみしげなBGMが掛かると、自分で捥いだエリ巻きを戻してやって飛び去る。
恐竜を育てるなんて相当おかしい奴だ、と全員からの全否定の捨てゼリフがあり、まだ生きてた博士が呻きながらジラースの名を叫び、映像が悲壮感タップリに炎に包まれEND。
いろいろ話が判らないところが多くて困るが、異常な博士が変装していたり洞窟に秘密の研究所を持っていたりと乱歩チックな感じが面白い。
ただ、世界観として、怪獣はそく退治しなければならない危険なものとして描かれているのでしょうがないんだけれど、博士そんなに悪いかな、と。
まぁ、あれだけ大きくなれば、いずれ何かしら事件になるとは思うけど、「恐竜を育てるとは恐ろしい」って、そうかなぁ、という気も。
それにも増して、口パッカリ開けたウルトラマンの笑えない行動がさすが宇宙人だなと。
エリ巻き死んでから戻してもフォローにはならんよ。
あとは、カメオ出演とか脇の演者が面白かったことと、ウルトラマンに対してゴジラのキグルミが以外にデカいんだなといったところか。
読み直して気付いたが、イデたちが追跡していたボートに乗っていたのが博士ということでいいのかな?
もちろん、最初はそう思って見ていたが、あまりに早くイデたちの目前に現れたんで違うのかと思った。
博士のイデたちとの距離と方向がヘンなんだよな、たぶん。
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- 2012/07/23(月) 09:24:58|
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