
またしても諸星作品、『壁男』を読んでみました。
これは、『諸怪志異』を買ったときについでに買ったもの。 以前読んだ作品も入ってるけど、タイトルの“壁男”が気になって購入。 ちなみに、この本は既刊単行本の文庫版で、あらたに2本、読みきり短編が追加されてます。
この前までは、諸星氏でも、ずっと中国ものばかり読んでたんで、現代の日本が舞台というだけでなんか新鮮。 後半の「遠い国から」のシリーズも、見たことない異国というか未来なのかどこか違う星なのかSFなのか判りませんが、やっぱり新鮮。
内容的には、前半を「壁男」のシリーズを中心に、日常(現代日本)のなかに異常が現れ、やがて大事になっていくタイプの話で纏められていて、後半が「遠い国から」のシリーズと、それに連なる短編からなっています。 どちらも発想が素晴らしく、意外性と奇妙な味わいに満ちています。
タイトルの「壁男」は、堺雅人主演で2007年に映画にもなっている作品で、文字通り、壁の中に住む男が居るという話。 もっとも、安部公房の「箱男」とは違って、隠遁するために壁のようなはざ間に人間が隠れ住んでいるんではなく、外でも中でもない、壁という二次元世界の中に何やら住んでいる者たちが居る、という、都市伝説というか、現代の妖怪のようなものの話。
タイトルからしても、ありがちかな? と思って読み始めましたが、なかなかどうして、発想が面白くかなり諸星テイストでした。 ただ、3話で終わりと短いのと、設定が全体的にこなれてない感じがして、トータルで見るともうひとつかな、とも。 倍ぐらいの長さにして、前半を壁男の日常だけで、設定とかもっと詳しく描いた方がよかったのかな。 でも、それなりに面白かったですけどね。 コンクリートの壁はあんなに分厚くないと思いましたが。
「ブラック・マジック・ウーマン」は、珍しく作者本人と思われる漫画家が出てくる70年代の作品。 真夏の夜、風を通すため、ぼろアパートの開かずの窓をこじ開けたら、隠れるようにあった坪庭(的な狭い空き地)で近所の人たちがサバトを開いているという、ややコメディーチックな話。 何でこういう話を発想したのか聞いてみたい。 開かれているのがサバトというのが諸星氏らしいか。
「鰯の埋葬」は、代々会社に伝わる神様を管理することになった閑職の男の話。 これは「世にも奇妙な・・・」で取り上げられてもおかしくないタイプの風刺の効いた話で、これこそ、ちょっと安部公房的。 意味が判ると怖い話でもあるけど、絵の雑さからオチが判りづらい。 よく見ると、途中で出てくる神様と、ラストの神様は違う。
「会社の幽霊」は、バブルへ突入せんとする80年代イケイケの日本を思いっきり風刺した怪作。 ラストのイメージに驚き。
第2部である後半は、一転、異世界(遠い異国)に旅をする淡々とした話で、すべて繋がりがある。 見たこともない文化と風習を創作させたらピカ一ですね。 特に植物のデザインとかが素晴らしくて只々関心。 「カオカオ様」は読んだことがあったんで、なんとなく全部知ってる話かと勘違いしてたんですが、前後にこんなに面白い話があるとは驚きでした。 「カオカオ様」しか読んだことない人は、ぜひお勧めなんで読んでみて欲しいですね。
ところで、諸星作品もけっこう読んできたんで、完全な新作じゃない短編集だと、収録作品が重なってることが多くて、これからは、読みたい作品があっても、その重複との戦いになるんでしょうね。 アルファ商法じゃないんだから、あんまりベストアルバム的な編集のものは乱発しないで欲しいですよね。 と、いいつつ、もう一冊、双葉の文庫買っちゃったんですが・・・・・・。
まぁ、古い単行本は、高いし手に入りづらいしなんで、再編集版みたいなのも、ありがたいっちゃありがたいんですけどね。 前より中途半端な収録だけはやめて欲しいですけど。
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- 2014/11/01(土) 07:26:04|
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