
創元版のポオ小説全集の1を読んでみました。
これは、もともと、ミニョーラの『ヘルボーイ』がラブクラフトから影響を受けてるっていうんでクトゥルーをたどり、今度は、ラブクラフトの作品がポオから影響受けてるっていうんでたどり着いたもの。
なかでも、読みたかったのは、「アッシャー家の崩壊」
これが、忘れましたがラブクラフト作品のどれかのイメージソースらしく、「へぇ」と思ってかなり前にに購入してました。
20編以上からなる短編集(詩人でもあるし、ほぼ短編作家のようなものらしい)ですが、様々な作風どれも面白かったですね。 初めは、古い言い回しに苦戦するんじゃないかと思ってたんですが、意外とそんなこともなく楽しめました。
この『全集1』には、推理系の作品はほぼなく、怪奇幻想、空想科学、昔話風のホラ話等の硬軟取り混ぜた感じのバラエティーさで、1作ごとにイメージが違い、ユーモア系の話が多いのも意外でした。
ラブクラフトと比べると、フックになるようなエピソードの足りなさは否めませんが(古代の邪神とか出ないし)、同系の雰囲気はビシビシ伝わってきますね。 「アッシャー家」はもちろんですが、「壜のなかの手記」が特にクトゥルー神話っぽかったですね。 それと、「アッシャー家」は、もろ『ウルトラQ』の「クモ男爵」の元ネタなんですね。 (さらに、手塚の『奇子』も元ネタにしてるんだとか。 次中古で見つけたら買おう買おうと思ってたとこだったのに、余計なこと知ってしまった・・・・・・)
ほか、「アッシャー家」同様、謎の病気で精神を病む女の人が出てくる系の話も何篇かありますが、どれも詩的な持って回った言い回しで、主人公が追い詰められた精神を吐露していくのが醍醐味。 似てるっちゃ、全部似てます。
昔話風の寓話は、悪魔が出てきたり、身体の一部がどうかなったり、とにかく極端な人物が出てくる。 なかでも、「鐘楼の悪魔」は、ちょっと安部公房チックで面白かったですね。 おかしなルールに縛られた町によそ者が入り込んで町がメチャクチャになる話。 諸星大二郎的でもありますか。
SFでは、「ハンス・プファアルの無類の冒険」が凄い。
気球に乗って月まで行く男の話で、同時代の同様のテーマの作品に「俺の方が勝ってる」と相手を批判する解説付き。
なんですが、鼻息荒く解説してる科学考証が全部間違ってるのはご愛嬌。 なんせ、大気圏外にも大気があるのかないのかを真剣に言い争ってる時代なんで。 結果、ポオは、「宇宙にも希薄ながら大気はある」として、月まで気球を飛ばします。
あと、特筆すべきなのが「使いきった男」で、タイトルからして謎を呼びますが、これ、非常にミニョーラテイストです。
最後、載っててちょっとビックリしたのがひとつ。
以前書いた本の感想に
『謎のチェス指し人形「ターク」』というのがあるんですが、このなかに、ポオが記者時代、このタークの謎についての手記を書いた、ということが書かれていたんですが、なんと、それが載ってるんです。
「メルツェルの将棋差し」がそれなんですが、まさか読めるとは・・・・・・。
もの凄く、論理的にタークの謎を解明していて、ほぼ言い当ててますが、やっぱり内部構造までは判らなかったようですね。
なんだかんだで、けっこう楽しんで読めたんで、機会があったらほかの作品も読んでみたい気はします。
それにしても、解説によると、ポオって、他人の剽窃には厳しいくせに、自分は古今東西の名作から引きまくりというか、丸写しもけっこうしてたりして、まぁ、編集者としての一面もあるんで、既存の材料を組み合わせて新しい作品を作る能力に長けてたってことなんでしょうけど・・・・・・。
なんか、荒木飛呂彦みたいな人だな。
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- 2015/05/29(金) 07:19:59|
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