
戦前のSF映画を丹念に調べた良書です。
ちなみに、副題に“ゴジラは何でできているか”とありますが、
これは、円谷が『ゴジラ』を撮るまでに受けた様々なSF的影響のことで、
ゴジラスーツの素材の話ではありません。
(読むまで、本気でそういう話が少しは出てくると思ってましたが違いました/笑)
基本的に、『ゴジラ』以前でSF的要素があり、可能な限り内容の確認が取れる映画を紹介してあります。
サイレントがほとんどで、だいたい、大正時代ぐらいから。
というのもそれ以前だとSFの概念が根付いていないから、撮るのも観るのもままならない。
海外の場合は、映画の登場と共にトリック撮影も生まれ、いきなりSFが撮られるわけですが、
日本の場合、主にトリックは忍術、チャンバラ映画に使われたようで、ロボットやクリーチャーなども、
最初に出てくるのは全部時代劇。非常にシュールです。
読むまでは、結構カタログ的な本なのかと思ってたんですが、
とにかく粗製乱造で驚くほど大量に映画が作られていた戦前なのに、残っているのはほんの一握り。
タイトルだけでは、とうてい信用できないんで、確認できたものとなると、更にごく僅かなんですね。
そこを、熱意と執念で探索してく様が読み物としても面白く、意外な発見から情報がひも解かれるのがまるで推理小説。
そんな中、キーになる人物、映画会社が色々出てくるんですが、詳しくは読んでもらうとして、
紹介されている作品の中からいくつかピックアップしたいと思います。
まずは、よくぞ残っていた『狂った一頁』(1926年)。
有名なんで知っている方も多いと思いますが、大正時代の前衛映画。
新感覚派の制作ということで、脚本がなんと、川端康成!
精神病院の中で患者の精神世界を映像化。
何よりすごいのが、『アンダルシアの犬』よりも2年早いということ。
2つ目は、本邦初の着ぐるみ特撮、『大仏廻国』(1938年)。
昨今、リメイクされるとかされないとかで話題の映画ですね。
大仏が名古屋の辺りを徘徊するだけみたいですが、映像が見たい。(笑) 残ってないのが残念。
筒井康隆が雑な編集版を若いころ見て憤慨したとか。(特撮場面がなかったらしい)
3つ目は、タイトルだけでもインパクトが凄い『江戸に現れたキングコング』(1938年)。
内容は、当時よくあった大猿物(よくあったんかい)で、たぶん大きくても2ⅿ。
ただし、この割とよく出来た大猿を演じ、メイクも担当したのが、後の大橋史典氏。
なんかのインタビューで、かなり凝ったサルのメイキャップをやったと聞いてましたが、
まさか、それがコレで、そののち『マグマ大使』とかの特撮担当するんだからビックリ。
人に歴史ありですよ。
そのほか、B級作品の活躍や、アマチュア作品でのSFの登場の早さ等、様々な研究成果が見られます。
読み物としてもホントに面白いし、戦前の映画界のいかがわしさと活況が知れ、
SF関係なしにも楽しめるんじゃないかと、むしろゴジラやSFファンよりそっちかも。
とにかくお勧め。(14年の本なんで、更なる発見で情報が今とは違ってる可能性もありますが)
ほんと、これ読むと、ゴミもむやみに捨てられませんよ。
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テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌
- 2018/07/13(金) 08:00:53|
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