「リメイクに『バビル2世』を」、というリクエストから、原作への理解度アップのため「バビル」「101」双方読んでみました。
読んでいる最中ずっと考えていたのが、「これをどう評価したらいいのか」、ということで・・・、正直、読みながら困ってました。
自分も好きな作品だったし、好きだからこそリクエスト頂いただろうことを思うと申し訳ないというか、「こんな話だったのか・・・」と面食らったというか・・・、
と、いうのはですね、書きづらいんですが、これがあまり面白くないんですね。
もちろん、これは見方の問題であって、魅力がない訳ではないし、決して取るに足らない過去の作品ではないんです。ないどころか、印象としては実に現代性のあるテーマと、理性の利いた現実的な表現をしようとしていることが汲み取れます。(背景やメカなども、当時としては劇画に近い感じに描きこまれている部分も多いです)
「バビル」が便宜上4部、プラス「101」と、一区切り付くたび、徐々に面白さもアップし、「101」では理想の感じで一番面白いともいえます。
では、序盤、特に第1部がどうしてイマイチな感じに思えたのかというと、(何巻目かで誰かの解説でも書いてありましたが)やっぱり、少年漫画にあって非常に特殊な設定とその作劇そのものにあると思いますね。
横山作品をこれ以外だと「マーズ」しか読んでいないのに解説めいたことをいうのもおこがましいんですが、まず、非常に物語(ドラマ)が淡白で、主役が初めから強く感情もあまり表に出さない(バビル1世の子孫ということ以外あまり素性も語られない)。成長もほぼしないし、矢継ぎ早に戦闘を繰り返して話が進む。
要するに、当たり前の少年漫画だと思って読むと、主役目線で一緒に成長していくというお約束が出来ず、主役に感情移入出来ないわけです。さらに話にはドメスティックなドラマの要素が欠落していて(女性はほぼ出てきません)非情なまでに戦闘が繰り返されます。つまり、“戦ってばっかり”ってこと。
初め、これに面食らって、いきなり途中から読まされているような感じと、終わらない戦闘に、「あっ、そういう描き方なんだ・・・」と、乗り切れないものを感じてしまいました。
が、しかしですね、見方によっては煩わしい部分がなく、テンポがいいとも考えられるわけです。
で、これは話も跡目争いだし、いわゆる「三国志」や戦国武将の逸話と同様で、戦術の純粋なぶつかり合い、相手への裏のかき合いが描きたいことの中心なんだと思って読むと、「なるほど」と思うわけです。
しかも、SF作家としては、ワンアイデアを膨らましていくタイプだと見えるので(事実、当初は第1部、ヨミが砂漠で死ぬところで終わらせるつもりだった)、まず“宇宙人の子孫が5千年後に超能力で激突する”という設定ありきで、さらにおいそれとは設定を覆さない律儀な性格と理詰めで展開していく作劇術とで、到底少年の成長物語にはしたくても出来ない。
だって、設定上バビル1世の能力をもっとも濃く受け継いだものに2世の権利を譲渡するんで、2世は初めから最強じゃなきゃダメなんです。(ちなみに、ヨミは2番手で落第)
話も進んで、しもべが3体とも活躍する頃になると、少しずつなれてきて面白く読めるようになって、3部あたりではだいぶ面白く、「101」などは1話ごとにドラマも充実してきてかなり面白いんですけどね。
それにしても、ヨミの人間味の溢れ方はかなりのもので、浩一に感情移入出来ない分(と、いっても浩一目線で読みますが)ヨミがそのあたりを非常にカバーしていて、悪の側の人間としては凄く稀有な存在感です。
じゃあ、感情移入出来るの?っていうと、夢が世界征服であのご面相なんで無理ですが、部下に優しく、地球に優しい、指導者としてはかなり優秀で、曲解すれば、ヨミの立身出世話に取れないこともないし、自分より強い相手に頭脳で果敢に挑戦していく話と要約できないこともないほど。
また、必ず各部のラストには死んじゃうっていうのも面白いというか、情けないというか・・・、いったい、何回生き返るのかと。(笑)
あと、策に溺れる感じがまた悲しいかな笑ってしまう。
能力を使い過ぎると老化して死んでしまうのに、うっかりしもべ操りたさから超能力増幅装置に自ら座って干乾になって死亡とか。(原作では能力が拮抗していてヨミもしもべを操れる)
煙幕をスクリーンにして、映像で浩一を惑わせようと思ったら、その煙幕がなかなか晴れなくて逃げられるとか。
かなり溢れてます、人間味。
とにかく、ヨミは浩一のことを恐れていて、気配だけで脂汗ダラダラ。
事実、ヨミの人間味とは対照的に、浩一は非常に冷徹で徹底的に悪を叩き潰そうとしますし、能力自体もかなり勝っています。
しかも、しもべがまた強力で、テレビ版とは違ってロデムはあまり活躍しないんですが、その代わりロプロスが大活躍。そして、
怖い。とにかくデカいし鳥だか翼竜だか判らないし、ミサイルは撃つは超音波は放つは、攻撃はまったく受け付けないはでロプロスだけでヨミの基地は壊滅状態になるほど。
でもって、現れたらそれがこの世の見納めってぐらい、さらに桁違いに強いのがポセイドン。
唯一、足が遅いのが弱点といえば弱点だけど、到着したら最期と思っていい強さ。さすが神を名乗るだけあって、何も効きません。
浩一の超能力も魅力ですが、やっぱりしもべの存在が作品の要というか最大の魅力と感じます。
また、ロボットだということ、デザインにも非常に魅力を感じます。
何気にロプロスのデザインは凄く、怪鳥を描けといわれて果たしてあの格好になる人がどれだけいるのか。(ラドンっちゃ、ラドンだけどね)
ポセイドンも胴体が樽の横山ロボのラインそのものですが、ちゃんと鉄人ともジャイアントロボとも違う印象なのが凄いですね。
この辺はリメイクのしどころかと。
デザインでいえば、ヨミが第3部で造ったV号もいいです。
あの頭部の感じと、色の塗り分けが面白いですね。
あと、「バビル」の影響を受けている作品として、よく「ジョジョ」3部が挙げられますが、印象としては一人ひとり超能力者と戦っていく「101」とも似ているし、自分の輸血で増えた能力者と対峙していく「101」やF市の中という限定された空間で展開されていく「バビル」3部後半などは、「ジョジョ」4部とも似ています。
隔壁をドンドン閉めながら地下に逃げていくヨミの基地は、ネルフ基地の原型のような気も。(違うかな)
読み終わってみれば、変わってもいるけど、魅力も大変ある作品だ、とあらためて言えると思います。(なんだかんだで結構嵌ってたかと)
リメイクに関しては、何を何処までやるかはまだ決めていませんが、原作に近いラインでやりたいですね。
まったく連想も出来ないものではなく、違ってはいてもトータルで見ると、やっぱりそうだね、って感じになるといいかと思います。
関係ないですが、ヨミのアジトに掲げてある十字のマーク(教団のマーク?)があるんですが、これがキシリッシュのマークとクリソツなんでヒマがあったら見比べてください。
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- 2011/08/03(水) 10:41:01|
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