魔球のような原理でロケットが消える話。もしくは、代々木公園が泥沼になる話。
<主な登場人物>
■科学特捜隊メンバー
ハヤタ(黒部進):本作主人公。異星人と衝突、死んだのち異星人と一心同体となり復活。マジメで実質の副隊長。無闇に顔の濃い25歳。ふてぶてしいほど頼りがいあり。若干滑舌悪し。
ムラマツ(小林昭二):科学特捜隊日本支部ムラマツ班隊長で、通称「キャップ」。謹厳実直の慎重派だが、ときに冷徹な面もある36歳。怪獣に対しては常に“やっちまう”男。16話より角刈り。
アラシ(石井伊吉):射撃の名手にして力持ち。常に危険の矢面に立たされるアンビバレントな26歳。不死身説あり。デリカシーに欠ける嫌いあり。
イデ(二瓶正也):武器開発担当の化学ヲタ。ムードメーカーに徹するがメンタルは弱い24歳。照れ笑いが甲本雅裕似。
フジ・アキコ(桜井浩子):科特隊の紅一点。主に通信担当。宇宙人難の相がある若干ウーマンリブ思想かぶれの21歳。
岩本博士(科学センター所属)(平田昭彦):武器開発に従事するナイスミドル。
■一般人
ホシノ・イサム(津沢彰秀):科特隊に出入り自由の謎の子供。短パンの悪魔。いざとなれば殺しも辞さない11歳。気転を利かす頭はあり。16話より科特隊制服着用。ときどき非人間的能力を発揮。(非人間説あり)
冒頭、東京、代々木体育館で開かれる国際平和会議を妨害せんとする事故に見せかけた殺人事件が続発。
各国の代表が乗った航空機、船舶などが次々に事故に遭う事態に、パリ本部からアラン隊員が東京に送り込まれる。
ライトの絞られた作戦室では、透明アクリル板に示された事故現場を睨みながら犯人像を推理。イデは卑怯な第三国の妨害と捉えるが、アランは宇宙からの妨害もありうると可能性を広げる。アップになる映像。闇に浮かぶ顔々。何処かから響くサイレンの音。サイレンは次第に大きくなり、そのまま場面は国道一号線の深夜のカーチェイスへスライド。回転灯を点け猛スピードで追跡するパトカー。老人と子供を轢き殺したらしい車は狂ったように疾走。脇道に入り、人気のない山道に逃げ込む轢き逃げ車。なおもパトカーが追跡を続けると、突如轢き逃げ車は爆発炎上。犯人は出てきたところを確保される。
このシーン、犯人確保までのカメラの構図が素晴らしい。炎ナメの車のローアングルからの正面ショットでパトカー到着。切り替えして、パトカーのローアングルカット、車の下の空間から僅かに覗く逮捕劇。共に構図はシンメトリー。ちなみに、狂ったような逃走劇を繰り広げた犯人は女性に見える。
翌日、キャップ、ハヤタ、アラシ、アランは科特隊専用車で事故現場へ。警官の話によると、爆発した車は、見えない壁のようなものにぶつかったかに見えたらしいのだが、ハヤタたちは訝しげ。が、アランによると、今回の一連の妨害事件は、みなどれも見えない壁に激突しているとしか思えないものばかりなのだという。
ちなみに、科特隊専用車、右のフロントバンパー(映像では左)が下に曲がっている。
その後、採石場のような山を切り開いた広場に到着すると、何もないのに足を取られたようにタイヤが空転してしまう科特隊専用車。アラシが慌てていると電子オルガンのトリルによるSF音。ビックリしたハヤタは脱出を指示。直後、科特隊専用車は大爆発する。
ハヤタ、アラシは、異音のするなか、何も見えない空間を睨み「見えないロケットだ!!」と発言。それを受け、キャップにより即座に科特隊本部からビートルが発進。東京の空を警戒する。
急な出動な上、敵が見えないときてガラが悪くなるイデ。フジにたしなめられ、電波探知機で航跡を突き止めると、空には出し主の居ない飛行機雲。そのまま交戦に入りビームの打ち合いになるビートルと見えないロケット。ビートルは、調子の出ないイデの空元気もあり善戦するが逃げられる。
本部、何ゆえか自転車を持ち込んでいるキャップ。いきなりしゃがんでペダルを手で回し始めると、高速回転によるスポーク消失現象を実演。さらに、カラフルに色分けされた円グラフのようなものが付いた、小型手回し扇風機のようなものを激しく回し始めるキャップ。色が混ざって灰色になることを実証。これらの結果、ロケットの消えて見える原理がわかった気になる一同。イデはこれらのことからロケット見破りのための知恵を絞ることとなり、眠れぬ日々を過ごす。
ちなみに、自転車のスポークは見えなくなったが、円グラフは終始丸見えで消えてはいない。
研究に従事するイデ。普段手厳しいフジもコーヒーのサービスなどでご機嫌を伺う。イデ、テレまくり。
ロケット発見装置が完成し、作戦が決行される。
前日まで徹夜であったイデは、立ったまま寝てキャップに呆れられる。
結局、スペクトルα、β、γ線による光学的な見地から装置を開発したイデ。キャップによる回転説はあまり加味しなかった様子。
その後、ビートル各機に分乗し、それぞれ光線を照射。ロケットは無事発見される。
見つかったロケットは、ロケットというよりUFOといった方がしっくりくるフォルムで二枚貝か、サンプルと違ってペッタンコでガッカリなハンバーガーのよう。スターウォーズ的ゴチャメカの詰まった側面は動かず、上下の皿が回転。飛び立ち始めると、ガメラの如く下側から炎を噴出す(もちろん炎ごと回転)。動いていない部分もあり、炎による発光までしているところを見ると、やはり、回転とは別の方式で消えていた可能性が濃厚。
ちなみに、デザインは単純だが洗練されている。
空中戦が展開されると、撃たれて炎上したロケットは杉林に墜落。科特隊も徒歩に切り替え、粗大ゴミのようなものを担いで現場へ向かう。
途中、くぐもった獣の咆哮が聞こえると、細身のぬりかべのような巨人がヌッと出現。と、アラン唐突に「やっぱり、ジャミラ・・・」と謎の発言。「ハァ?」といった風にアランを仰ぎ見るキャップ。
猛烈な前進を見せる科特隊。頭のてっぺんまで肩がそびえ立った細身のぬりかべは口が真っ赤。追い詰められると早足で森の中を逃げ回る。
粗大ゴミに見えたのは兵器だったらしく、足を止め攻撃に転じる科特隊。
フジが近付くとぬりかべを見つめながら半泣きのアラン。イデは調子が出てきたのか何時になく好戦的「やれっやれぇ~!!」
科特隊の猛攻に山陰に逃げ込むぬりかべ。
見失い、夜になり、小休止の一行。しゃがんでタバコをくゆらすキャップが渋い。
ふと、キャップがアランの「やっぱり、ジャミラ」発言を思い出し、問いただすと、意外なことを語りだすアラン。
それは、あのぬりかべが人間だ、という話であり、宇宙に取り残された飛行士の成れの果てなのだという。
ロケットは、見知らぬ星に不時着し、水の少ない環境から身体は変化し、今また復讐のため、自らロケットを改造し地球に現れたのだという。(ここまで、キャップとアランの推測)
そこまで聞くと、イデは突然「俺、止めた!!」「ジャミラと戦うの止めた!!」と、銃を地面に捨てる。
人類への脅威は何者であれ排除しなければならない、という科特隊の理念無視の行為に激昂するアラシ。
イデは、自分がロケット発見装置を造ってしまったことを悔やみ、そのことに他の隊員も何も言えず佇むばかり。
アランは、この飛行士置き去り事件の顛末を、極秘事項のタブー扱いということから、速やかな抹殺を命じる。それも、一匹の、宇宙から飛来した怪獣として・・・。
人類の敵となってしまったジャミラは排除するしかないのだ、と説得をするキャップ。イデ、置き所のない感情を闇夜に向かい「バカヤロー」という言葉で爆発させる。
翌日、防衛隊の協力を得、完全に怪獣扱いで掃討作戦が開始される。
山村を襲うジャミラ。逃げ惑う村人たち。非常事態にわざわざ半纏着た消防団員も避難誘導に一役買うが、自分も逃げた方が賢明か。
ジャミラは火を吐き始め、藁葺き屋根の農家は簡単に燃え上がる。
攻撃のさなか、ハヤタは逆方向に走る子供と、それを追い掛ける母親を発見。ぞんざいにキャップに現場を離れることを言付けると猛火の中に走り去る。
自分の家に辿り着いた子供は、一目散にハト小屋に駆け上り一羽のハトを抱え出す。生きていたハトにニンマリ満足げな子供。ジャミラの影はそこまで迫っているのだが、ハトを無事救い出せた歓喜からか、はたまた避難中に頭部でも強く打ったか、庭の隅に座り込みハトを愛で始める子供。即刻ハヤタが抱えて事なきを得るが、突っ込んでいったハヤタが心配なイデは、ハヤタを探しながら、迫るジャミラに思わず「ジャミラ、てめぇ、人間らしい心はもう無くなっちまったのかよぉ~~!!」と絶叫。一瞬沈黙が流れる。
悲しげな顔にも見えるジャミラは、何か表現したいのか話せない口を盛んに動かし続ける。
山からいきなり代々木体育館まで歩いてきたジャミラは、防衛隊による人工降雨弾による水攻めを受ける。(火には耐性があり、水のない星に育ったと考えた結果水攻め)
連続する水攻めに苦しみ、のた打ち回るジャミラ。すかさずウルトラマン出現。代々木公園で大格闘開始。位置的にNHKは壊滅状態か。
ウルトラマン、有無も言わさず腰溜めで手から放水。泥まみれになって這いずり回り、赤ん坊のような呻き声を漏らし続けるジャミラ。代々木公園を泥沼にし、哀れというより悲壮な印象を残して絶命。
その後、夕景のなかキャップの簡単な謝辞があり、例の如く、その辺に勝手に十字架立てた墓を作りねんごろに葬る。
国際平和会議は無事開幕し、ジャミラ鎮魂の碑がひっそりと代々木体育館に設置され、「犠牲者はいつもこうだ・・・」「文句だけは美しいけれど・・・」と、犠牲者を省みない科学発展という名の横暴にイデが義憤を吐露。何時までも来ないイデに皆が呼びかけ、なんとなくATGっぽくEND。
科学発展の名の下に犠牲になった末端の者への哀悼。失敗を隠蔽する組織への義憤。味方と対峙することへの葛藤。盲目的な科学信仰への警鐘。と、様々な問題提起がされている社会派な1本。やはり傑作か。
最後のイデの吐露が、顔が見えない分心に響く。
テーマもはっきりしていて、表現も十分だったと思うので、それ以外の部分で。
まぁ、例によって矛盾やいい加減なところはオンパレードなのだが、UFO(円盤)を終始ロケットと言っていたのは、邪推するとジャミラの乗って行ったものが元々ロケットだったからなのか。
ジャミラ発生のメカニズムは、もはや神話の世界。
ジャミラが飛行士のジャミラだと判るくだりは、何かバッジとかあった方が説得力が増したような。
巨大化することもちょっとぐらい説明して欲しい気も。
ところで、この、宇宙に放り出された乗組員が、地球に自力で戻ってきて復讐を果たす。っていう、ストーリーラインは、ベスターの『虎よ、虎よ!』と同じ。
もっとも、類似してるだけで真似たとも思いませんが。(『虎よ』のフォイルはメチャクチャ強いし)
あと、関係ないですが、地震速報はいらん。
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- 2012/10/29(月) 07:49:58|
- MX円谷劇場
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アラン隊員はなぜ巨大で異様な姿をした生物を見てすぐに行方不明になった飛行士ジャミラだとわかったのか?
だいたい、なぜジャミラは巨大なのか?
「故郷は地球」に対する、昔からの疑問はそこなんです。巨大になる必然性がまったくないんですから。
まあ「恐怖に宇宙船」でも、ガヴァドンが巨大になる必然性はなかったのですが……。
二次元の絵が特殊な宇宙線にあたると立体化するのなら、土管に描かれ実在化した怪獣は2~3メートルの体長でしかないでしょう? 本当ならば。いやいや、ムシバは、いくつも積まれた土管すべての壁面を使ってガヴァドンを描いている、だから絵自体がかなり大きくなって20~30メートルの怪獣になるのだと、勝手に脳内変換しているからどうでもいいですが。巨大ヒーロー番組「ウルトラマン」なのだから、そんなことを疑問に思うことじたいナンセンスかもしれません。
リアルタイムのときは、全体を覆う異様な雰囲気に???だったわけですが、何度かの再放送でラストのイデの独白にショックを受け、うなずいた次第です。そして、その後の仲間たちによる呼び掛けの余韻。
佐々木守氏の脚本集「ウルトラマン 怪獣墓場」に本作も収録されていたのですが、ラストの「犠牲者はいつもそうだ……」はありませんでした。実相寺監督が付け加えたのでしょうか。
佐々木守・実相寺昭雄コンビによる作品群は3つのジャンルに区分できるんですね。
第一群「真珠貝防衛指令」「恐怖の宇宙線」・・・ファンタジー
第二群「地上破壊工作」「故郷は地球」・・・シリアス(SF)ドラマ
第三群「空からの贈り物」「怪獣墓場」・・・コメディ
- 2012/10/29(月) 20:35:25 |
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ウルトラマンの相手がみんなウルトラマンと同サイズなのには、やっぱり理由が必要ですよね。
こじ付けでもいいから、何かあるべきで、「サイズ一緒じゃなきゃおかしいだろ」「毎回同じなんだから、説明なくても判るだろ」では、製作者の驕りが見えます。
一番簡単なのは、相手にウルトラマンが合わすことで、それは『セブン』になってやってますね。やっぱり合理的だと思います。(『帰りマン』でもその設定があるようですが、等身大の帰りマンが走ってきたときは、何か異様な違和感ありました/笑)
実相寺監督のものは、コメディーも味わいがあっていいですが、カメラワークとマッチするのは、やっぱりSFテイストのあるシリアスで少し不思議な話でしょうか。
あと、巨大化の不自然さもそうですが、怪獣に外国人の名前(ジャミラはしょうがないですが)をそのまま付けるのはどうなんでしょうね。(ウルトラに限りませんが)
今では考えられないセンスかもしれません。
- 2012/10/30(火) 08:24:33 |
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やはりプロポーションの差でしょうか?
等身大のウルトラマンって、セブンと違って、らしくないんですよね。ダダの回でそう思いました。帰マンの場合、ぐっとセブン体型に近くなるわけですが、それでも違和感があるとすると(私も感じました)、そう感じさせる要因はデザインなんでしょう、たぶん。あるいはウルトラマン=巨大という刷り込み作用か。
ところでATGっぽいとの感想があったのでご質問ですが、80年代に佐々木・実相寺コンビで企画された、ATG映画「元祖ウルトラマン 怪獣聖書」をご存知ですが?
前述の脚本集「ウルトラマン 怪獣墓場」に所収されていてワクワクしながら読んだのですが、セブンやシルバー仮面の世界感をウルトラマンでやっちゃダメだろう、というのが率直な感想でした。
- 2012/10/31(水) 23:16:11 |
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等身大ウルトラマンの違和感は、もう単純に刷り込みだと思いますね。
輸出されたウルトラマンを見たアメリカ人は、「マントが無いのに何で飛べるんだ?」と言ったらしいですが。
日本に於いては、見る側だけでなく、製作側にも強烈な刷り込みと影響を与えたみたいで、その後、他社が類似作を撮っても、巨大ヒーローは“ウェットスーツに固いお面、飛び出した目”と、完全に呪縛から逃れられなかったようです。(もっとも、ワザと似せていたものもあったのかもしれませんが)
逆も真なり、というわけで、このスタイルだと「ウルトラマン(も含めて)みたいなのに小っちゃいな」と、思っちゃうんでしょうね。
「元祖ウルトラマン 怪獣聖書」というのは初めて聞きましたが、『Qザ・ムービー』の元になったシナリオなんですね。
しかし、ATGの映画として公開してたらどうなっちゃってたんでしょうか。子供が見に来てビックリみたいな、暗い実験映画のような感じだったりして。
- 2012/11/01(木) 01:49:03 |
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