自室の天井に10年前から消えないシミがある。
不精なもので、天井まではなかなか掃除が行き届かないのだが、あるとき壁のホコリを掃除機で吸ったついでにそのシミも吸ってみたが取れなかった。
シミとは言っているが、実は液体が染み付いたようなものではなく、黒く乾いていてやや厚みがある。だから掃除機で吸ってみたのだが、掃除機の吸引力程度ではびくともしない。
気が付いたときには、小さな点だったのが、年々大きくなって、今は1センチ程度の小判型に成長している。
たまに、見上げては目を凝らすのだが、なにやら楕円が折り重なっているようで、濃い部分と薄い部分があるのが判る。
その、黒褐色の薄ら乾いたへばり付き方に、どうも見覚えがあり、よくよく思い出してみると、それは岩茸そっくりだった。
岩茸とは深い山奥の岩場に生える地衣類で、食用。生えている場所が難所なので、取るのも命がけのあれだ。
そう思って見てみると、そう見えてくるし、なにより、10年掛かって僅かだが成長してるのが証拠のような気もしてくる。
しかし、何で、部屋の天井に。
気になって、ネットで調べてみてもそれに該当する答えはなし。が、いろいろ調べると、古い昭和初期の百科事典のコケのページに僅かだが注釈があり、“環境が似ていると、岩場以外の建物の壁などでも稀に見られる”とあった。
岩場に似てるとはどういうことだ。
と、ここで、さらに昔読んだ渋沢龍彦の本のことを思い出した。
もう手元にないので、タイトルも判然としないが、たしか、中国の古い奇談を集めた本で、その中に部屋に生えるコケを珍重する話があった気がする。
そのコケが岩茸だったような。
たしか、稀に室内に生える岩茸を、部屋茸と呼んで、当時の王妃がとても貴重な食材として食べていたんだとか。
そんなものが旨いのかどうか判らないが、大きければ大きいほど高価で、部屋茸造りに一生を捧げた男が、70近くまで育て上げ、死ぬ間際に献上、一財産作り上げた話が出ていたはず。その大きさ、実に直径30センチ。
今、10年掛かってやっと1センチ強。絶対、一生掛かってもそんなデカくはならないだろうが、このまま育てて本のジイさんのように、いずれ財産にしてやろうと目論見中。
しかし、そんなもの誰が買ってくれるというんだろうか。
と、いう、作り話はどうだろうか。
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- 2013/01/25(金) 06:10:48|
- 夢、作り話
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