
以前、諸星大二郎の特集本(『文藝別冊 諸星大二郎 異界と俗世の狭間から』 感想も書いてます)を読んでみて、いずれ機会があったら代表作ぐらいは読んでみたいなと思ってたら、偶然ブックオフでまとめて文庫版を発見。意外にもこんなに早く読む機会が来てしまいました。嬉しい誤算。
で、順番に読み始めて、『暗黒神話』ですよ。
もう、いきなり面食らいました。何なんだコレは、と。
怒涛の情報量と精緻な組み立てのミステリー。その完成度たるや、一人の作家が集大成として発表するようなレベルじゃないですか。
ヒッソリ始まった話は、あっという間に大きく深遠に。歴史や時空間も越えるような壮大な展開にクラクラ。
それも、ただ大風呂敷広げてるだけじゃなくて、専門家が舌を巻くような知識を独自の解釈で繋げて行き、新しい神話に仕立てるような組み上げ方。それがいちいち説得力がある。
と、いうか、古代史や神話の知識に疎いと、展開されている事柄が史実なのかフィクションなのか判別できない部分も。
また、作劇も思った以上にしっかりしていて、6回で完結という短期連載(なんと少年ジャンプ)のため、序盤が駆け足ぎみではあるものの、キャラクターの造形などもよく出来ていて、菊池一族の登場シーンなどは、金田一物の映画のような雰囲気も。味のあるキャラクターのビジュアルも独特のリアルさで異彩を放っていてクセになる。
今回、改めて諸星作品に触れてみて思ったのは、絵はヘタではないということ。それどころか普通に上手いよな。
表現と言う意味では、まったく過不足なく表現されてるように思う。この作品には、この絵しかないと思わせるものもあって、単純にデッサンの良し悪しでは測れない。(そのデッサンがヘタではないとも思うのだが)
それと、クリーチャーのデザインが土偶が元とはいえ、見たことがないイメージで正直ショッキング。
あと、セリフが上手いですね。無駄がない上、言い回しが適切。こういう作品傾向だと、説明につぐ説明でセリフが溢れ返っちゃって、いわゆる説明ゼリフに終始しがちだけど。ぜんぜん作品を壊してないのはさすがの構成力。
作品自体が、内容の割りに短いんで、武の家族の話や、菊池彦の日常なんかが加われば、そのまま大作映画にもなるな、と思ったら、そんなことしなくてもアニメになってるんですね。賛否はあるようですが、原作に忠実なアニメ化のようです。
あと、史実かフィクションか、という疑問を少し調べてみたら、施餓鬼寺と磨崖仏は無いんですね、やっぱり。
あらすじ書くの忘れてしまいましたが、内容知らない、という人で、読んでみたいと思った方は、知らないまま読んでみてください。その方が純粋に驚けるでしょう。
自分は、すでに特集本で絵を数点と内容をあらかた知ってしまっていたので、インパクトは半減でしたから。(それでも凄いなとは思いましたけどね)
それにしても、凄い才能だよな。
仮に同じ資料を読んでいたとしても、見ている世界が他の作家とはまるで違う。
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- 2013/07/13(土) 07:05:32|
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