
文庫シリーズの3冊目は、『彼方より』です。
これもまた、独特に面白かったですね。
史実を題材にしていないものも独創的で、諸星氏でしか味わえないような読後感のもの多数でした。
まず、出世作の「生物都市」、もう初めから着想も構成も完成されて世に出てきたんですね。驚きます。
ハリウッド的、元に戻ってハッピーエンド、ではない展開が秀逸。
「海の中」も味わい深いですね。似たような、海の中に女の人が漂ってるイラストを描いたことがあって(HPにあります)、若干、既視感がありました。自分が描いた女の人は生きてる設定でしたけど。
あと、ラストの手は、ちょっとあのイメージじゃないかな。
「天神さま」は凄いですね。妙に説得力のある設定と構成力。物が壊れる表現が大友的で、ちょっと俗かな、と思ったら、その壊れていく理由に衝撃。諸星氏は神様の扱いが独特で、他にこういうイメージで神様見てる人って居るんでしょうか。
「ぼくとフリオと校庭で」は、この中では、割と普通の部類かな。もちろん独特の味わいがありますが。
『風の又三郎』的、不思議な転校生物語ですが、自分は、なんとなく「宇宙パトロール シゲマ」を思い出しました。
「ど次元世界物語」は、ナンセンスなギャグもの。自分的にはあんまりかな。あくまでギャグものとして見れば、ですが。
「ヨシコちゃんと首たち」は、どういうことなんでしょうか?(笑)発想が怖いんですけど。 でも、嫌いじゃないです。
「桃源記」は、面白いですね。作中唯一の中国ものですが、桃源郷の秘密とラストの展開がいいです。中国の詩が元になっているとのことですが、恐るべき知識量ですね。
「男たちの風景」、上手いショートショートSFですね。構成が効いていて、オチが際立ってます。
「カオカオ様が通る」、もう、なんでこういう発想になるのか。(笑)大航海時代、まだ見ぬ大陸に住む奇想天外な人種を、噂だけで描き表した物語とでもいうか。なんというか。参るなまったく。もちろん非常に面白く、味わいもまた深いです。
「砂の巨人」、面白いし臨場感もありますが、よく、こんな行ったこともない土地の話をここまで見て来た様に描けるなと、ただただ感心してしまう。描く世界に、苦手意識とかあるんだろうか。
ざっと、感想を書いてみましたが、どれもお薦め。興味の沸いた方はぜひ。
全体としては、やっぱりセリフが上手いのと、影の使い方も上手いなぁ、と。あと、人種の描き分けも好感が持てますね。
作者あとがきを読むと、各作品を描くべくして描いている風なのが感じられて、圧倒されます。
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- 2013/08/22(木) 04:20:14|
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