
諸星作品、集英社文庫版5冊目は、『妖怪ハンター 地の巻』です。
作品の存在自体は、ずいぶん昔から知ってましたが、本格的に読むのは初めて。
これもなかなかでしたね・・・、っていうか、すでに読んだ作品が3作も入ってるんで、評価としては、初期作品と90年代のものになりますが・・・・・、しかし、同じ集英社文庫でこれやるかなぁ。
短編集がかつて出た豪華本の文庫化の体だったんで、収録作品変えるわけにはいかないし、こっちでも代表作削るわけにはいかないし、ってことだったんだろうけど、なんか損した気分。
まあ、それは置いとくとして、やっぱりいいのは、第1作で、映画『ヒルコ』の原作でもある「黒い探求者」ですね。30ページ弱なんで、急いでる感じはありますが、真骨頂バリバリです。
古事記に材を取り、地方の伝説から人類創生の偽典にまでたどり着く壮大さ。そして現れるヒルコの想像を絶する姿・・・。
たまらないですね。宇宙まで繋がってはいませんが、クトゥルーなどのコズミックホラーの影響は、この作品から既にあるんじゃないかと思います。古事記版和風クトゥルー神話。
映画の『ヒルコ』も観ましたが、結構前なんでどんな風だったかは忘れました。コメディータッチだったような気も・・・。「赤い唇」と「海竜祭の夜」の要素が入っていたことはもっと覚えていないな。
「赤い唇」は、学園で巻き起こる、優等生豹変の小作品。稗田がかかわりづらそうな話で、出て来かたもやや唐突な印象。用語などのディティールと魔性の正体などは流石な感じ。女の子が丁寧に描かれているのがいい感じ。
「ヒトニグサ」はいいですね。こういう話好きです。話の展開が俗っぽいのと、ヒトニグサ自体の掘り下げが少ないのが残念ですが、架空の妖怪伝承の類を創るのは面白そうです。ヒトニグサが「子供の遊び」の謎の生物みたいな成長の仕方だったら、また違った感じだったかも。
「蟻地獄」は、「黒い探求者」などと同じ考古学的異界譚風ですが、どちらかというと、「世にも奇妙な物語」などのショートショートの世界を広げた感じ。異界の穴に入り、いい穴だと願いが叶う。その穴が畳み3畳ほどの四角で等間隔に碁盤の目状に整列しているという、こういう設定の仕方に非凡さを感じる。グロテスクな土偶のらしいディティールもしかり。
「闇の中の仮面の顔」は、最初の単行本用の書き下ろしで11ページの短編。諸星作品によくある、異時代に紛れ込んで酷い仕打ちを受けるタイプの話で、ここでは、ある男が縄文時代でやむなく殺人を犯し、現代に戻ってもなお呪詛をされ続ける。時を越える呪詛というアイデアがいい。
「死人帰り」は、反魂の術で死人が街に戻ってくるホラー。その死人には、生前の人物の魂というものがなく、単なる肉の入れ物状態。そこへ異界の異性物たちが入り込み、地上へ出てくるため邪神復活を画策する。諸星式コズミックホラーの体だが、絵も含めて全体に荒く、稗田の登場の仕方も唐突。ただ、力作ではあるし、やはりディティールには見るべきものもある。
ちなみに、この作品だけ、小さい頃にジャンプの単行本で立ち読みした記憶があって(数ページだけ)、死人が台風後の水の出た街で得体の知れない黒いブヨブヨをズルズルと喰らうのを見て、そっと本棚に戻しました。(ズルズルやったのをずっとひろしの親父だと思っていたが、今回読んだら違っていた)
やっぱり、稗田のキャラがいいですね。あんまり積極的な解決はしないけどたのもしい。
映画公開後、稗田が沢田研二に似ていることになったようだけど、これって、もともとからあったことなのかが気になる。だって、初期稗田って『アダムスファミリー』に出てきそうな陰鬱な外人(ってほどじゃないけど)顔で眉毛まっすぐだけど、90年代ころのは上の画像みたいに山なりのモデル眉。どっちが本来の稗田なのか・・・。
やっぱり初期かな、らしいのは。
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- 2013/09/24(火) 23:17:19|
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