
以前買った集英社文庫版諸星作品の最後です。
これもまた、よかったですね。ボリュームのある作品が多く、読み応えがありました。
裏表紙の“水と雪と官能の物語”というとおり、今までとちょっと違った感じがよくて、好きなイメージのものが多かったです。
「産女の来る夜」は、いきなり官能的で、そこも山深い寒村に残る風習らしさがあって納得。産女と産女の赤ん坊の造形がたまらないですね。悲しい話ではあるが、ある一定の行動をなぞる、奇習、奇祭のたぐいがどうして生まれるのか、というのがありありと判った気がした。異形の神様をそのまま実在させるのが諸星作品の真骨頂だな。
「淵の女」は、山で迷った稗田が河童の住む村に迷い込む話ですが、絵といい雰囲気といい、凄く好きです。闇の描き方、薄らすっとぼけた村人、徐々におかしくなる村の空気、一番好きかも知れない。完成度が高い気がする。河童が実は・・・、という展開や、オチもいい。ちょっと落語っぽいとこも。
「うつぼ舟の女」は凄いですね。うつぼ舟なんて、格好の題材じゃないか、と思ったらこんな話になるなんて・・・。もう、クトゥルーですよ。常世が宇宙の代わりのコズミックホラーですよ。ラストに生まれる弟の邪悪さがもう。でも、あの卵の形はなんか違う気がする。
「海より来るもの」は、人魚が流れ着くところから始まる、蛭子神社の秘密の話。これも雰囲気がたまらないですね。次々に流れ着く水死体。腐乱した身体で喋りだすところは『狼男アメリカン』みたいです。ラスト、みんなで漂ってるシーンは美しさすら感じました。
「鏡島」はトリッキーで面白いですね。よく次から次と、こういう話を思いつきますね、ホントに。名称等、細かいディティールが非常にしっかり考えられてるんで、無理やり感がないんですよね。いや、創作じゃないのかな?海モッコとか・・・。スイカの船頭さんカワイイ。
「六福神」は、以前読んだ作品集にも収められてたんで感想は割愛しますが、今回、もう一度読んでみたら、この子たちは中学生なんですね。最後渚が全裸でしたが・・・。
「帰還」は、補陀落渡海(ふだらくかいと)の上人が戻ってくる話ですが、補陀落渡海って、初めて知りました。いや、勉強になるわ。 胸からマカロニいっぱい出してましたけど、智涯はホントは何処行って来たんでしょうか・・・。海岸の松もこれが真実だとしたら、嫌~んな感じ。
もろもろ、好きなものもありますが、粟木町の一連の話が面白いです。稗田は登場しないで手紙のやり取りだけ、ってのもまたオツです。手紙で話が進んでくのはクトゥルー神話にもよくありますよね。
で、とりあえず、これで手持ちの諸星作品は全部読んでしまったんですが・・・、『妖怪ハンター』シリーズの単行本はまだある様子。
と、いうわけで、Amazonで残りの本を2冊買っちゃいました。(安かったんで)
なので、楽しい悪夢は、まだまだ続くというわけです。
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- 2013/11/22(金) 12:10:12|
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