
もう読むまいと思ってたケッチャム作品再びです。
かれこれ数年前、ちょっと離れたブックオフに行ったとき、手ブラで帰るのが嫌で、何故か大量にあったケッチャム作品の中からチョイス。 その後、読むのを後回し後回しにして、何となく今読了というわけです。
感想はというと、正直、ケッチャム作品としては普通かなぁ、と。
まあ、前に呼んだ『隣の家の少女』と『オフシーズン』が超強力だったんでそう思うのかもしれないし、中篇と意外と短く、エスカレートする前に終わってしまう感があるからなのかもしれませんが、とにかくそれほどではない印象です。(解説いわく「入門編にどうぞ」らしいです)
ストーリーは、妊婦が中絶クリニックの前で頭のおかしい夫婦に誘拐され、郊外の民家の地下室で棺桶風の箱に押し込められたり、外界を遮断する箱を頭に被せられたりして拷問(主にムチ)され、奴隷にされるというもの。
展開としては、前に上げた2作よりはるかに救いがあり、陰惨さは少なめ。 主犯に理性があったりするのが別の意味で怖いといえば怖いけど、話通じない系よりはマシな印象。 主人公も超タフだし。 ただ、筆致はケッチャムなんで冴えてますんで、人が死ぬ場面などは鮮明に映像が浮かぶほどリアルですんで注意。
で、結果として、ケッチャムとしては普通、凡作なのか、というと、アメリカでの評価は違うらしく、賞の候補に挙がってたり、キングが絶賛してたりと高評価。 どうやら、アメリカ社会を皮膚感覚で知っているのといないのとじゃ、感じ方が違うらしい。
今回でいえば、中絶反対のキリスト教系原理主義カルトの存在と、アメリカ人のキリスト教感あたりが判ると違うのかなと。
それと、これは、ケッチャム作品全体にいえるのかもしれないけど、白人社会の暗部、マイノリティー(今となっては白人が多数派ではないのかもしれませんが)の起こす犯罪ではない犯罪の恐怖が特別な印象を与えるのかもしれない。 その辺が感覚的に判るとだいぶ違うんだろうなと。
ところで、もう読むまいと思ってた割に買っちゃてるのは、怖い話が好きだからというわけじゃないんです。 むしろその逆。 でも、怖い話、特に出来のいい怖い話には引き付けられるものがある。 解説の人も書いてましたが、単に怖い話と言っても、本当に怖がらせるためには、そうとうの没入度を必要とするし、それには高度な構成力と表現力が必要なわけで、出来のいい怖い話は、単純に上手い話に出来てるんですよね。 だから、怖いもの見たさも手伝って、ときどき古本屋でケッチャム見ると、つい手に取ったりしちゃう。 でも、これだけは読んどけ、みたいなお墨付きがないと、ほかの知らないホラー系作家には手ぇ出しにくいかな。
『隣の家の少女』と『オフシーズン』には元ネタの実在事件がありましたが、今回は、どうなのか、と思ったら、やっぱりありました。
これはもう、どうやら元ネタの方が陰惨きわまるようで、「箱の中の女事件」とか、「キャメロン・フッカー」とかで検索してみると判ります。
いやぁ、世の中すげぇ事件があるな。
ちなみに、この作品読むと、犬派も猫っていいな、と思いますよ。
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テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学
- 2015/06/14(日) 07:24:42|
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