
手塚治虫のあまり知られていない晩年の作品、『ゴブリン公爵』を読んでみました。
これは、元々作品に興味があったというよりは、ある種の勘違いで読むに至った1冊。
というのは、ある、まとめサイトのようなところで、「児童向け学年誌やテレビ系月刊誌って、
アニメや特撮の設定とか勝手にいい加減なの作ってたよね」、という語り合いがまずあって。
そこから話題が脱線して、特集記事とかで怖いのがあってトラウマになったという展開に。
そこで紹介されてた怖い記事っていうのが、『灯台鬼』の話。
幸か不幸か、まったく聞いたこともなく、このとき初めて存在を知った話で、さっそく調べて興味を持つ。
灯台鬼 - Wikipediaとりあえず、ウィキ貼っておきますが、大雑把にいうと、古代版都市伝説で、
遣唐使で渡った日本人が帰らず、次に息子が渡ると父親は、見世物で生きたまま燭台にされていた、というもの。
タイプの違う話が様々あるようですが、捕まった日本人が人体改造されるのは同じで、その様が非常にエグイ。
そら、子供のころ見たらトラウマになりますよ。(その、該当記事のイラストがまたリアルでね)
で、画像やらの検索から派生して、どうやら灯台鬼(燈台鬼)が出てくるマンガを手塚が描いていると判明。
なんだってぇ!! ということで、それが、この『ゴブリン公爵』。
なんですが・・・・・・、これがちょっと違った。出てくる燈台鬼は10mぐらいの発掘された青銅製の魔人。
それはそれで面白いんですが、いわゆる『灯台鬼』の話とは関係ありませんでした。
舞台も中国だし、頭にロウソク付けてたり、デザインは『灯台鬼』から来てるのは間違いないですがね。
内容は、といいますと、これが、晩年(85年~86年)の作だからなのか、あんまり、う~~ん。
展開も豊富で場所の設定とかも中国と変化球が効いてるし、キャラも立ってるんですけどね。
少年誌の、大コマ使いで1頁多くて5、6個のコマ割りに影響されてか、描きっぷりが雑なんですよ、残念ながら。
話は、中国版『魔人ガロン』といった感じなんですが、実は、コレ、時期的に相当『AKIRA』に影響されてます。(笑)
悪漢の主人公が超能力者だったり、能力を研究する施設が出てきたり、能力の使い方がホラーテイストだったり。
やたらパイプの多いゴチャゴチャした建物が出てきたり、それはもう、そこはかとなく『AKIRA』。(笑)
面白いのが、絵的にも影響が見えて、以前もメビウス線については
『手塚治虫の冒険』の感想で書きましたが、
まー、これが満遍なくメビウス。(笑) やり過ぎて、やってないところとの差が出ちゃって逆にアンバランスなぐらい。
それはいいとしても、何と、大友が『AKIRA』でやってた、独特な髪のハイライトをやっちゃってました。
大人になった愛愛の髪がそうで、ちょっと目を疑いましたね。あと、エフェクトや、やたら多い効果線もそうでしょうね。
なんかねぇ、巨匠攻めてるなぁ、というのと同時に悲しい感じにもなりました。(まあ、見て貰えばわかると思いますが)
ただ、さっきも言ったように、キャラは立ってて、珍鬼の得体の知れない感じもいいし、
なにより、女の子が可愛い。愛愛も可愛いんですが、後半に出てくる、いずみがメチャ可愛い。
もしかしたら手塚がデザインしてないかもというぐらい。
ちなみに、燈台鬼自体もいいデザインで、特に掘り出された直後とか遺物然とした雰囲気がいいんですが、
目覚めると、急に眉の太いオッサンになっちゃってこれまた残念。
ロウソク等のデザインは『灯台鬼』からなんですが、ストーリー上のイメージは、
興福寺の「天燈鬼」「竜燈鬼」で、
これはまったくの鬼なんで、結果、顔がでん六豆になっちゃってるんですよね。
もし、リメイクするなら、自分なら三星堆風の感じがいいですかね。トウテツ紋はその時期ないようですが。
(燈台鬼の兜の飾りには饕餮<トウテツ>紋が入ってるという設定)
あっ、関係ないですが、やっぱり、手塚、作中にエロスを持ち込んでいて、愛愛、子供と大人で2度ひん剥かれてます。
とまあ、こんな感じなんで、珍品を見る感じ、レアな手塚を見る感じならアリかもしれません。
あんまり、お勧めはしませんが。
それにしても、こんなの描いてたとはなぁ。
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- 2018/06/30(土) 07:35:40|
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