
またまたまた、1章読んだので感想です。
ちなみに『聊斎志異』とは、中国の清時代に書かれた(集められた)怪談奇談集。
この『ザ・聊斎志異[聊斎志異全訳全一冊]』については、
前回以前の感想からどうぞ。
今回の4章目は、「狐異の巻」。ずばり、キツネの話。
それまでの章でもキツネはちょくちょく出てきてましたが、今回はキツネオンリー。
これが、鬼(中国では“鬼”と書いて幽霊の意味)と同じで、
キツネはキツネで、世界というか、社会がしっかりと形成されてるんですね。
これが、非常に面白い。
もちろん、キツネにはオスメス両方いるわけですが、『聊斎志異』の中では出てくるのはメスばかり。
しかも、常に人に化けてるし、たいてい美人ばかり。そして、非常に色好み。
つまり、艶っぽい、色っぽい話が多いわけです。
話は、大抵、勝手に家に入ってきたりして、いきなり出会うところからスタート。
即、惚れ合って、即ベッドイン。あっという間に夫婦同然になって、さて・・・・・・、という展開。
似てるっちゃ、全部同じパターンといっても過言じゃないほど。
ちなみに、キツネには化ける以外にも特殊能力が多々あって、
高速で空(または陸)を移動して、かなりの遠方まであっという間に行くとか、
透明になったり、何かの隙間に紛れ込んだりして姿を隠したり、
遠くの場所の物を移動せず取ってくる(盗む)ことが出来たり、
あと、狐仙(仙狐)といって、修行して仙人の仲間になったり。
そうなると、神通力が強力で神様と言って差し支えなかったり。
仙人になるまでの僅かなあいだだけ奥さんになって急に去る、というのも多い展開。
それでは、ここからは、いくつかピックアップ。
ただし、さっきも書きましたが、話が似てるので、厳選して。
まずは、「青梅(せいばい)」。
ある男の家にキツネ(美女)が転がり込み、娘、青梅をもうける。
が、男が浮気をするとキツネは激怒し去り、男は再婚すると、娘を叔父に預ける。
ワル叔父は娘を売り飛ばし、下女として奉公する身となる青梅。
意外にいい家のそこの娘と仲良くなり、貧乏だが見込みのある男との結婚を勧める。
が、貧乏を嫌った父親の反対にあい、諸々あって、じゃあってんで青梅が結婚。
青梅側はトントン拍子に出世し裕福に、元の仕えていた家はしだいに没落。
その後、裕福だった家の両親が死んだり、路頭に迷った娘は尼寺に身を寄せたり。
紆余曲折が続き、最終的に、青梅と再会。
青梅は、元々勧めていたからと自ら妾へ退き、仕えていた家の娘を夫人にしてしまう。
さらにその後に役所に訴えると、2人とも夫人の扱いとなってEND。
話は非常に長く、あまりキツネの話の代表というわけでもないんだけれど、
冒頭のキツネの転がり込み方が面白い。
男が外から帰って帯を解こうとすると帯の端にズッシリ手応え。
なにやら落ちたようなので探すが何もなく、そのうち着物の後ろから女出現。
次は、「阿繍(あしゅう)」。
ある男が出先の雑貨屋の娘(阿繍)に恋をし恋煩い。帰っても思いが募ってノイローゼ。
そこで次の機会にまた行くと店は閉まっていて一家は帰郷していた。
叔父に頼んで探してもらうと、もう郷里で結婚が決まったという情報。
で、こちらも失意のまま見合いをするべく相手を下見に行くと、途中の家で阿繍発見!!
隣りを借り偵察し、事情を聴くと叔父の話は作り話、親せきの家に身を寄せているとの事。
その後、毎晩家に来るようになりねんごろに。
が、下僕の言うには、隣りにはそのような娘はいないらしく、よく見ると雑貨屋のときと着物が一緒。
かくして、「たしかに私は阿繍じゃないけど、負けないと思ってるの、どう?」
キツネとバレてしまい身を引くが、結婚した後嫁と見比べてみてと謎の言葉。
叔父の嘘に怒り、阿繍の家のそばで過ごしていると、嫁に行く算段はしていたがまだ行ってないことが発覚。
ほどなく戦が起こり、捕まったり逃げたりしていると、道に汚い女がヨロヨロ。
よく見ると、阿繍でビックリ。キツネかと思ったら本物。
聞けば、結婚の算段をしに行った父親と戦に巻き込まれたのだとか。
しかし、途中で女に助けられ風のように疾走。別れ際、これから意中の人に会うと宣言。
その女こそはキツネの阿繍。
のち、本物の阿繍と結婚し暮らし始めると、「仲人には礼を言うのが当たり前」、とキツネの阿繍登場。
そこから、ちょくちょく来ては、家の中の問題を片付け、家来を恐れさせる。
実は、阿繍とキツネの阿繍は前世で姉妹。天宮で見た女神の顔に2人で化けたが、
妹(本物の阿繍。つまり阿繍の顔は神様の顔)の方が上手く、キツネの姉はやや見劣り。
ライバル心から絡んできたが、妹との仲を取り持つ気持ちは初めからあったのだった。
これも長い話。ニセモノの話への絡み方、バレたときのゾクッとする感じも面白い。
変身が解けると本当にただのキツネになるんだけれど、人に化けてると人間とも子孫も残せる不思議。
最後は、この章のほぼラストの大長編、「蓮香(れんこう)」。
この話は非常に長いので(8ページもあるのだ)、かなり搔い摘んで。
男のもとに鬼(幽霊)とキツネの美女が交互に現れ情交。
それぞれが、それぞれをバケモノと疑い、見破るが、キツネの方がやや強く、
夫婦同然となったのはキツネの美女と。
鬼の女は去るが、突如、見知らぬ少女の姿で戻ってくる。
聞けば、死んだ少女の身体を借りて蘇生したのだとか。
顔は、死んだ少女のままなので(元よりブス)憂いていると、全身に痒み。
掻きむしると、皮膚が落ち、ひと皮剥けると元の美人に。
そのあとキツネは、「10年後に戻ってくる」と告げて病死。
はたして10年後、そっくりの子供として転生して再登場。
何も知らなかったが、鬼が名前(蓮香)を連呼するとハッと我に返り生まれ変わりを悟る。
その後は、3人で仲良く暮らしてEND。
とにかく、主人公が無闇にモテモテで、女性は2人しかいないけどハーレムもののよう。
また、転生の仕方が面白く、奇想なエピソードが続くが、
実は、『聊斎志異』としては、この程度では平常運転。(笑)
それだけに、ネタを探している人には、ぜひとも読んでもらいたい。
というわけで、「狐異の巻」でしたが、
それまでの話には、陰惨な話や、理不尽に酷い目に遭って救いのない話なども多く、
ただ怖い、不思議、というだけではすまない、読んでいて滅入るようなこともありました。
が、この章は、全編なにやらピンク色。(笑) 今までで一番読むのが楽しかったですね。
読むのもますますスムースでだいぶ慣れてきました。
もう、読んだ話は8割以上。
あとちょと、自分ガンバレ。(笑)
では。
スポンサーサイト
テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学
- 2019/10/12(土) 10:23:13|
- 本、コミック感想
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0