
『しあわせの理由』を買ったときに同時に購入していたイーガンの短編です。
これを書くにあたり、アマゾンでレビューをチェックしてたら、購入日が表示されて、
その、あまりの寝かせ具合にちょっとビックリしましたが、いま読了です。(笑)
量を読んでるわけじゃないし、新刊となると尚更なので、
こんなに最新(といっても、当時のですが)の科学が出てくる作品は初めてで色々驚きましたし、
『しあわせの理由』に比べたら、かなり読むのに時間が掛かりました。
まあ、理解という意味では、それなりに、量子論や脳科学(主に意識について)なんかの本を、
素人が興味本位で読むレベルのものですけど、(こういうこともあろうかと)読んでたんで、
特に、序盤の意識についての問題を扱ったものは、すぐに、おっと思いましたね。
ただ、全体的には、面白くなるまでが長い・・・・・・。
そして、登場人物がそこはかとなくいやったらしい。なんとなくインテリで意識高い系?
(そら、登場人物みんなもの凄くモノを考えてますから意識も高くなるってもんですが)
ですが、とにかく、着想、アイデアが素晴らしいですよね。
最新の科学や発見をストレートに扱うんじゃなくて、そこからどう捻って哲学や思想に反映できるか。
そのかわり、序盤の数作はストーリー展開の面白さよりは、アイデアと結論の意外性の方が際立ってるかも。
ストーリーも面白いのは、やっぱり最後の2つ。
とくに、「ひとりっ子」は、まず、人造人間の作り方として、こういうアプローチがあったか、と驚き。
いままで、機械に意識が宿るかについては、かなり否定的だったけど、これなら可能性はなくはない気も。
ただ、全てのシミュレートが上手くいくとしても、クァスプが完全に並列処理してないことが条件ですが。
でも、もしかしたら、脳のシミュレート自体が完全に天然の脳と機能まで同じなら関係ないのかも。
どっちにしても、とてつもないパワーのコンピュータが必要ですけどね。
(それと、自然と意識が宿る場合、AIは必要ないかなぁ)
ストーリーは、意外性もあり、感動もありで、驚いたのは、ひとつ前の「オラクル」と関係があるところ。
解説で知って、驚愕。そうなるのか!!
数学的なアプローチが現実に反映する「ルミナス」は数学好きにはたまらないでしょうが、疑問も。
ラスト、別次元の世界が消されまいと主人公たちの世界の数論を根本から書替えて阻止する、という描写が出てくるけど、
何をどうすると、そっちの世界からこっちの世界の数論を変化させられるのかがよく判らない。
なんか、特殊なガジェットとか出した方がよかったような。
それにしても、イーガンは、アイデンティティについての不安が大きすぎるんじゃないのかと。
まっ、いいんですけど、(多世界解釈の)他次元の自分のことについてまで悩むのはちょっと理解が追いつかない。(笑)
考えすぎると不安になるものなのか。
一応、これから多重世界についての本(すでに購入済み)も読むつもりですが、読んだら、不安になったりして。
ならないか。
ほか、「ふたりの距離」とか、着想がとんでもない話なんかがありますが、
最新SFを挑戦したいという人は、ぜひ、体験して欲しいですね。
理解に時間が掛かるかもしれませんが、得るものはあります。
自分としては、興味のある分野ではあったんですが、
『しあわせの理由』の方の生物学主体の話の方が面白かったかな、とはちょっと思いますけど。
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テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学
- 2021/03/31(水) 08:57:50|
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