
荒俣宏の『パラノイア創造史』を読んでみました。
昔、買いそびれた荒俣宏の本を思い出してアマゾンを覗いていた時、
同時に何点か買ったものの内のひとつです。
ごく端的にいうと、創造と狂気の話。
創造における狂気の役割。
異常な精神状態の者が生み出す物の価値。
大雑把にいうとこういう括りの症例集。
以前から、こういった世界の本は多少読んでたんですが、
オカルト、サブカル視点だと思って買ったら真面目な論文だった、ということが結構続いて、
まあ、それでも興味ある内容なんで苦労しながらも面白くは読むんですが、
今回は、さすがに御大荒俣、実に判ってらっしゃる。(笑)
視点、捉え方が本当にいい。
具体的には、狂気に取り付かれた人々が残した遺物や研究結果を14の章で紐解くもので、
興味をひかれた部分をいくつか紹介すると、
1章、
悪魔の肖像画を描いた画家の資料をフロイトが分析するというもの。
いま(本を書いた85年)の視点から見ると、
画家をおかしくさせているのは、むしろ収容された教会側のせいと思えるところと、
分析したフロイトの見立てが、実は自分の分析になってしまっている、ということが面白い。
2章、
精神疾患者が多いドイル家(ホームズで有名なコナン・ドイルの一族)の話。
妖精に憑りつかれたかのような家系で、その中で説明される妖精が見えない理由が、
ニュートンのいうエーテル(静止空間)にいるからで、だから写真には写るが目には見えない。
この考えが非常に興味深い。
4章、
ニコラ・ステラは、幼少期から白い閃光を見ると五感が鋭敏になるという。
まるでニュータイプ。
5章、
心霊的能力で考古学的発掘をする話。
自動書記で過去を見るやり方がラブクラフト的。
8章、
交代性多重人格の話。
メスメリスムとラブクラフトの元ネタの関係。
10章、
壮絶な記憶力の持ち主の話。
その中に出てくる、詩の解釈が凄い。
詩は、共感覚を持たない人間にこれを味わわせる装置(!)
逆に、共感覚があり過ぎる者は詩に共感出来ずこれを理解できない。
11章、
呉秀三の功績について。
筆跡の書体から精神病を分類。
病者の新文字の発明の具体例を見、これが創造なら狂気は創造の必然条件(!!)
12章、
電気と幻覚幻聴の関係の話。
電気、電話の発明時、それらは、人工の幻覚幻聴の発生装置という捉え方も。
メスメリスムも含め、見えないもののパワーをスピリチャルなものとして感じる。
といった感じ。
幻覚や幻聴を伴うことが多いんで、
見えないものへの恐怖が様々な物事の原因になったりするわけですが、
この時期(前世紀の初め)あたりのSFや怪奇幻想小説には、
現代のテクノロジーに頼らない仕組みで過去や未来と関係を持つ話も多く、
そのあたりのギミック(この本の内容と接点あり)に非常に興味がありますね。
現代の科学では常識的に考えて無理ということも、
そのあたりのギミックにヒントがありはしないかと。
というわけで、実際、こういった世界に目を向ける原因を作ったのは、
荒俣宏の『帝都物語』だったりしたわけで、やっぱり面白かったです。
紹介してない話もみな面白いんで、ちょっと古い本ですが、ぜひ。
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- 2023/04/16(日) 03:41:51|
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